8章
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断して捨ててしまった。
右わきに抱えた厄介な女性のことがなければ本当に二度と会うことはなかったはずだからだ。
今となってはすでに住所も忘れている。
「…それは絶対か?」
『厳守だ。二時間後に待っている』
そこで通話は切れてしまった。
まずいことになった。
このままでは有無を言わせない彼女のことからして先ほどの事をやりかねない。
住所は本当に忘れている。あれから数年経っているのだから。
「ふふふ、お困りのようだね?」
「…」
確実に知人である篠ノ之束に聞けば問題はないのだろうが…
それでは何をされるか調べられるかわからない。
「ほい、ここに行けばいいよ」
空中にディスプレイが出てきた。
そこには恐らく彼女が指定した住所と思われる文字が書かれていた。
「どういうつもりだ」
「別に、唯の気まぐれと考えがあってだよ。君にも悪いことにはならないよ」
篠ノ之束はあの後、人気のない場所で降ろしてと言い、そのまま路地の向こうに消えていった。
この後何があるのかはわからないが、少なくとも今日の災難の峠は越えただろう。
そうであってほしい。
目の前にあるのは何の変哲もない一軒家。
…正直、帰りたい。このままどこか遠くへ行ってしまいたい。
だが、このままでは今まで以上に厄介なことになりそうな気がしてならない。
そう考え、意を決してチャイムを押す。
「来たか」
「…一応、客人なわけなのだが」
「お前にそんな礼節は必要ないだろうさ」
久しく見る彼女は、あの頃と変わらずだ。
「久しいな、千冬」
「お前は変わりないようだな、エミヤ」
「それで用件はなんなのだ?」
「そのことだが、お前は束に追われているな?」
確かに追われている、というかストーカーのような感覚だった。つい最近はなかったが、今日に限っては答えに近しい物を持って来ていた。
彼女の持つ技術であれば言っていたことも可能かもしれないが、それでも平行世界の移動時に付着、もしくは流れ込んだ物質の解析など可能なのだろうか。
その場に機材を置いていたわけでもないだろうに。
私の思考とは関係なく、千冬の話は進んでいく。
「あいつには私も手を焼いていてな。たまたま今回は電話に出たが、運よくだ。普段は何処にいるかもわからなければ、電話にも出ん。かけてくるのは時々あるが…
私としては奴の動向を把握したい」
話が見えない、というわけではない。
寧ろ私は千冬に利用されるかもしれない。ただで利用されるのは断るが、彼女の性格から考える
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