8章
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「君が現れる場所にわたしがこれから現れるとしたら―――どうしようか」
最悪だ! そう彼は思ったことだろう。
彼女はいつどこに現れるかわからない。しかし、あくまで一般人という彼の同行は軍や政府にかかれば時間を使えばどこにいるから把握できるだろう。
そして、その彼を確保したら―――
「確保!」
「…」
エミヤシロウの表情は諦めていた。
篠ノ之束を何故か脇に抱えて路地裏を疾走する彼はいまだに疑問を抱えていた。
何故、彼女を抱えてしまったのかと。
あそこで彼女を放置すれば分には被害が来なかったはずではないかとそう思えるからだ。追われたとしてもそれは今までと変わらない。重要参考人というところだろうか。
「君はうら若き女性を拉致する趣味があるのかな?」
「…」
ここで本当に置いて行こうか。
誰にせいでこうなったのか。いっそ先ほどの奴らに渡してしまおうかという考えさえ過った。
だが、そうはできない。彼女の性格は一筋縄ではいかないことは分かっている。
もしも、彼女が捕まり情報を提供しろと言われれば―――
『エミヤシロウを連れてきたら教えてあげるよ?』
などと言いかねない。
そんな時だった。
なんとも間の抜けた着信音がなった。
「はいはい、天才科学者篠ノ之束! 只今絶賛拉致られ中!」
もう何も言うまい。
「うん? うんうん。今そのエミヤシロウに抱えられてるよ? 彼、このまま人気のない所に行って私のもってる技術だけじゃなくてこのダイナマイトボ「黙れ」てへっ、怒られちゃった」
彼は決断した。ここにおいて行こうと。
このまま頭痛に悩まされるよりは追われた方がマシだと判断した。
「え? うん。いいよ。はい」
「…なんだ」
「電話を代われって」
一体誰だ。
私の事を知りたいと思う物好きがいるとは思えないが。
だが、篠ノ之束の知人問うのなら、少なくとも彼女よりはマシだろう。
「代わったが」
『私のことを覚えているか?』
その声には聞きおぼえがあった。
凛とした声に、その中に有無を言わせない強さがあることに。
「…誰だろうか」
だが、今関わるべきではない。彼女が篠ノ之束とどのような関係があったとしてもだ。
『束に以後貴様にずっと付いて回れて言うぞ』
「要件を聞こうか」
これ以上の彼女からの頭痛は勘弁してほしい。
『ふむ、用件は一つだ。私が以前渡した紙に書いた場所に来い』
まずい。
紙をもらったことは覚えている。しかし、あの時はもう会うことはないだろうと判
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