第四章
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第四章
「やったるけえのお」
「いや、わしがやる」
しかしだ。江夏はこうその水沼に言うのだった。
「あいつとの相手はわしがやるわ」
「御前がかいな」
「そや、やったるで」
こう藤瀬を見ながら話すのだった。彼は今藤瀬が来ると確信していた。
そしてだった。やはりであった。西本が動いたのだ。
「代走藤瀬」
「来たのう」
「やっぱりのう」
「西本さん攻めてきおったわ」
広島ベンチも江夏もだった。その言葉を聞いて言った。
「盗塁マシーンか」
「マークするか」
「ここはのう」
「来たな」
江夏はだ。マウンドからその藤瀬を見ていた。そこにいる藤瀬はやはり小さい。
しかし自信に満ちた不敵な態度でだ。一塁にいるのだった。
「走ってくるな、絶対」
江夏は確信していた。
「わしの前でそれをするか」
江夏の頭のよさはバッターに対してだけではない。ランナーにも向けられる。その抜群の勘のよさもだ。彼のその武器も使ってだ。
「刺すか」
牽制球もだ。考えていた。
ただし江夏は牽制球を無闇に投げない。そうしてはかえって逆効果なのを知っているからだ。無闇に投げないからこその武器だった。
藤瀬をしきりに見て牽制球をたまに投げながらだ。彼と戦っていた。しかしだった。
「!!」
江夏が投げようとしたところにだ。藤瀬は走ったのだった。
「走られたか!」
江夏は投球動作の中で顔を歪めさせた。警戒していてもだった。
だが今は投球を続けるしかなかった。それで投げた。
水沼はすぐに二塁に送球した。しかしだった。
盗塁成功だった。藤瀬は二塁にいた。江夏の負けだった。
「やってくれるわ」
江夏は二塁に移った藤瀬を睨みながら呟いた。
「よおもな」
今回は本当に走られた。その藤瀬を睨んでいた。彼の負けだった。
その第三試合は広島の勝利に終わった。藤瀬の盗塁は得点には結びつかなかった。しかしそれでもだった。江夏はベンチで言うのだった。
「あいつには負けたな」
「噂以上の速さじゃのう」
「ほんまあいつは盗塁マシーンじゃな」
「凄い奴じゃ」
「広島に欲しい位じゃ」
こんな賞賛の言葉さえ出ていた。
「あいつ、何とかせんとな」
「ここぞって時にやられるかもな」
「どうするかじゃ」
「あいつを見抜くか」
「絶対に見抜いたるわ」
江夏は本気だった。
「最後には勝つ。絶対にな」
「頼むで。それやったらな」
「ここはな」
「日本一になる為にな」
「ああ、なるで」
江夏にとってはじめてのシリーズだ。そして広島も勝てばはじめての日本一だ。彼等にとっては負けられないシリーズだったのだ。
それでだ。彼はまた言うのだった。
「今日もや」
「観るか」
「ビデオな」
「よく撮
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