6章
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れた」
冷たい。
「人に絶望することを拒むような、何かを望んでいるような眼だ」
「…」
「これでもだんまりか? まぁ、いい。
貴様は軍で何かを調べている時はそんな眼をしていたぞ。そしてラウラ達との鍛錬では希望に縋るような光を見た。なのに、それすらもどこか遠くに見ている。
貴様のこれまでに何があったかはわからないが、そんな眼をする奴をこのまま野放しにすることは軍が許可しても私が許可できん。
せめて、首輪くらいつけなければな」
そこで、エミヤシロウは笑った。
「なにがおかしかった?」
「首輪、か。付けてどうするつもりだ?」
「そうだな、家政夫としてでも仕立てて見せようか」
「生活能力のない君は仕立てることは無理だろう」
「…なぜそれを」
「見ていればわかるさ」
笑い話。だが、二人の集中力は若干の乱れこそあれ、上がっていく。
そして一瞬の間。
空気が完全に変わった。
「考えは変わらないか?」
「―――私もこれからどう生きていこうか迷っている。
だが、やらねばならないとは視えている」
「…そうか」
一気に空気が濃くなったような感じがする。
エミヤシロウは構えであり、構えではないそれを取りつつ、集中する。
負ける要因は無いと言っても、油断はしない。どんな状況でも対応できるようにあらゆる可能性を思考する。
突きか、上段からか、袈裟か、逆袈裟か、薙ぐか、銃か、どこからか援護されるか。
あらゆる可能性を考慮して構える。
「ふん。そうか」
パチン、と刀を鞘にしまう。
「…む?」
拍子抜けどころか理解が追い付かない。そんな表情をエミヤシロウはしていた。
「なんだその顔は。みっともないぞ」
「いや… 戦うと思ったのだがね」
「誰が戦うか」
戦況を見て、そう答えたのであればエミヤシロウはこのまま行ってしまうつもりだった。
だが、千冬はそんな感じではなく、納得してうえで戦うことをやめたようだった。
「なぜ」
「そんなもの、私の気分次第だ」
腕を組み、堂々と言い放つその姿に一瞬、眩暈がする。
「…真っすぐな眼だったからな」
千冬は空を見上げながら言う。
「迷いはあると言ってきながら、迷いのない眼だった。危険なものでもなかった。決意があった。
私が止めたところでどうすることも出来ないように思えた。
行け。いずれまた会うのならその時にでも聞くさ」
何をとは言わず、千冬は彼に向かってくしゃくしゃになった紙をよこした。
そして、彼女はラウラを抱え
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