6章
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「いや、ラウラには目標ができただろう。自惚れともとれるが、こいつは私になろうとしていたからな。
それが少し逸れただけでも良しとするさ」
木陰から現れる織斑千冬。
その手には刀が握られていた。
「君もか」
「私よりも強い奴はあまりいなくてな。本気で立ち向かえる奴というのは貴重な存在だ。それがどこに行くともしれんとなれば、ましてやそいつの本気が人知を超えるものだと知れば挑まないわけにはいかないだろう?
あぁ、そういえば貴様には手加減された借りがあったな」
ニヤリと嗤う彼女は美しく、だが冷たい殺気が浴びせられる。
「そもそも上層部は情報を漏らしすぎだ。
私が手を回さなければ貴様は世界で二人目のお尋ね者だ」
ということはそうなる可能性はとても低くなったと考えていいのだろう。
そうやったのかは知らないが、彼女が嘘をつくとは思っていない。
だったら、ここは彼女の望みに応えるのが礼だ。
二振りの剣を抜く。
干将・莫耶。
初めてエミヤシロウと戦ったあの夜に見た剣。
千冬に干将・莫耶に思う。美しいと。
日本刀のように美術的に価値のある物が多いが、エミヤシロウの持つ剣はどこか違う。美しさがあり、全てを切り裂くような鋭さがあり、清涼とした雰囲気がある。
もしかしたら奴はあれで人を切っているかもしれない。あの夜は皆、柄や峰打ちで全滅させられている。
だが、おかしいのはここからだ。
軍はあの剣を返却していない。今も倉庫で二度と開封されることはないというほど厳重に封印されている。
それがその手にあるのはどういうことだろうか。
「…どうした、かかってこないのか?」
哂う。
こっちを嘲笑い、脱力した姿勢。あまりにも隙だらけ。
だが、千冬の構えはゆっくりと、正眼をとる。
挑発に乗らず、自分のリズムで戦闘態勢を作る。
それを、エミヤシロウは待った。
万全になるまで数分もかからないだろうが、彼女の集中を乱してはならないというかのように彼は静かに佇むだけ。
一分―――――いや、30秒かもしれない。だが、長く… とても長く感じた。
「一つ聞きたい」
「…」
「貴様はこれからどうしたい」
無言。
「これから人を殺すのか?」
ピクリと反応。
「貴様から感じたのは血の匂いだ。数え切れない人の血の匂い。眼に映る危険なモノ。
…だというのに、貴様の存在からは危険さはおろか人殺しの気配すら感じない。矛盾だ。この疑問の答えはどれだけ考えてもわからなかった」
俯いていることで、表情は見えない。
だが、空気が変わった。
「そして時折見せる眼に私は興味を引か
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