6章
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その一人の全力をこの目に焼き付けておきたい。
軍というか限られた世界しか知らない私に世界の広さの一端を教えてくれ!
わがままと好奇心でお前に挑む私は叩きのめしてくれ、エミヤ!」
その時の彼は何を思ったのだろうか。
怒りか、嘲笑か、嫌悪か。どんな感情を抱いたかは彼にしか分からないだろうが、少なくとも怒りや嘲笑という人を見下すような態度ではない。馬鹿にするようないつもの笑みでもない。
少しの驚きと、その後の小さな笑みを彼が出した表情だった。
「――――いいだろう。ただこれは記録に残してはならないものだ。
映像記録やその類のものを使用しないと約束するならば私は喜んでラウラ、君の相手をしよう」
「わかった。
クラリッサ、軍の衛星を操作して私達を映させるな。他国にも見せるな。やってくれ」
『了解しました』
彼は思う。ずいぶんと溶け込めるようになったものだと。
少し前の彼女には拒絶があった。どんなことが過去に会ったかは知らないが、それがこの数カ月でずいぶんと変わった。まだ固さはあるが、少女らしい一面もある。
この戦いは彼には無意味だ。
手の内をわざわざ見せることなり、秘密を知られる。
だが、それも良いと思えると判断した。
今まで彼女はフルネームでしか呼んでくれていなかった。
姓だけでも呼んでくれたことが、少しだけ彼は嬉しかったのだろうか。
「私の秘密を見せてやろう。
しかし、これは長々と見せるものではなくてね。今の君では一瞬で終わってしまう。だから君を満足させることは出来ないだろう。
だが、手加減抜きだ。教え子には少々刺激が強いかもしれんが、高い授業料を払ったと思って諦めてくれ」
では、いくぞ。
彼に手に一瞬で黒塗りの弓と螺旋の剣が握られていた。
どんな手品かはわからないがそのことを気にする様子もなくラウラは駆けるように飛ぶ。
AICで絡め取ろうとするが、どこからか飛来した剣に阻まれ、防御。
気付いた時には彼の姿は無く。
『偽・螺旋剣』
何かが視界を縦に切り裂くような感覚を感じ、空間ごと抉るような荒れ狂う暴風と衝撃に、ラウラは意識を失った。
「…」
佇むその姿はこの惨状を引き起こした張本人とは思えないほど、その長身が嘘のように小さく見える。
ラウラの怪我は大したことは無いようで、触診を終えると少しの間、彼女を見つめ、踵を返す。
「やりすぎただろうか」
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