5章
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ているようだった。
「今日は…そうだな。炊き込みご飯でも作るとしよう」
「なんだそれは」
「材料を入れて――――いや、見ればわかる。夕食を楽しみにしてるといい」
「…」
気になるが、ここでさらに聞き出そうとすると自分が墓穴を掘るような予感がしてそれ以上は何も聞かなかったラウラだった。
材料は確保できた。
望む物全てではないのだが、それでもそれなりの物は作れるだろう。
クラリッサからの頼まれた物も買い物袋の中にある。
「それでは戻るか」
「そうだな。雨が降るそうだし、寄り道をせずに行くか」
エミヤシロウの隣を歩く二人。
傍からみれば穏やかに見えるかもしれないが、その穏やかな空気の中でエミヤシロウだけは感覚を鋭く尖らしていた。
軍は彼を自由にすると言っていた。
しかし、それを全て信じることなど無理だ。もしかしたらどこかでスコープがこの頭を狙っているかもしれないとさえ思っている。
そんな気配はないし、どこには怪しい人物はいない。
勘ぐりすぎと思ったが、警戒して損はない
隊舎が近づいて、自嘲するように一人思う。
やはり自分は壊れているのだと。
こんな思考をすることが、すでに他人を信じられないということを露見している。
全ての人を信頼していないわけではない。だが、全てを信じられない。一部の人間は信用に値するが、信頼はできない。
ここにいては迷惑がかかる。
去ることは良いことだ。
オレは、常に一人なんだ――――
「どうした、体調でも悪いのか?」
ラウラがいつの間にかエミヤシロウの前に回り、いつもと変わらぬ様子でたずねる。
表情には出していないつもりだったが、何かおかしかったのだろうか。いや、ここで動揺してはいけない。ここで仮面を落としてはいけない。
「いや、君が夕食でどのような表情をするのかを考え込んでいたようだ。
以前のように黙々と食べるのか、それともいまだに上達の兆しを見せない箸に苦戦しながら冷めた料理を――――おっと」
つい数瞬前まで頭が会った場所をラウラの蹴りが通過する。
「それ以上言ってみろ、殺す」
顔を真っ赤にして、事実をこれ以上言うなとナイフを持って伝える。
何もなかったかのように彼は食材を持って厨房に向かっていく。
後ろからの視線を無視し、誤魔化すかのように。
『時間だ』
『…カメラは』
『すでに動作を止めている。問題は何もない』
深夜、寝静まった隊舎の中で数人が息を潜めていた。
『…すまない。こうして私達は自分のことしか守
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