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最期の祈り(Fate/Zero)
夢と現 
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 思わず怪訝そうな声がでてしまった。が、よくよく考えてみればラウラが自分を恨んでいる節があったのは確かだ。そのことかと当りをつける一夏。
 しかし、当のラウラは少し困った顔するばかりだった。なんと言えばいいのか……?そんな顔をしながら考えあぐねているようだった。時計の長針が丁度一周したころ、漸く決意したのかラウラは急に足元に置いてあった木刀を掴むと、徐に一夏に投げ渡した。
 「うをっと…」
 それを危なげなくキャッチする一夏だが、その目は不審なものではなく、困惑して泳いでいた。
 「一体何のつもりだ?一方的に殴りかかってくるものだと思ったぜ」
 対するラウラは、気まずそうに、ただ顔しかめるばかりだった。
 「いや、最初の頃はそれも考えたが、私が本当にしたかったのはそんなことじゃなかった。……すまない。初めはお前に憂さを晴らしたり、お前の大切な人を傷つけることしか考えてなかった。本当にすまなかった」
 その告解は、非常に一夏を困惑させるものだった。そして、続く言葉は更に一夏を困惑させた。


 「という訳で殴りあおう」


 「どういう訳で!?」
 あまりにもあんまりな発言に驚愕する一夏だが、逆にラウラの一夏を見る目も不審なものへと変わっていった。木刀を構えながら言う。
 「やらないか?」
 「やらないぞ!?というか、なんでそのセリフでやると思った!?」
 「日本の男子は仲直りをする時、必ず殴り合いをして、そのあと河原で倒れて切腹するのだろう?」
 「そのエセ日本知識どこから仕入れた!?ジャンプでも切腹はしないぞ!」
 すると、ラウラの目が驚愕で見開かれた。
 「そ、そんな……じゃあ、私がAmazonで仕入れたこの名刀村正は……全くの無駄?」
 「無駄になって本当に良かった」
 ドイツ人の恐ろしい日本観に冷や汗を流す一夏だが、ふとさっきのセリフの中に気になる言葉が混じったのを聞いた。
 「仲直り?」
 そのセリフで本来の目的を思い出したのか、ラウラは日本刀を投げ捨てると(※危ないので止めてください)キッと目を鋭くした。
 「ああ。やはり今でもお前に言いたいことも山ほどある。許せないことも、怒りも……そして、ほんの少しだが感謝もしている」
 「ラウラ……」
 その言葉は、奇しくも的確に一夏の心も表していた。仲間を傷つけたやつを許せない……許せないが、ラウラはその仲間を救うために戦ってくれた。命をかけて。もはや、恩や憎しみだけではお互いに目の前の人間をはかれなかった。そこまで来て、漸く一夏はラウラの意図を察した。お互いに溜まっている感情を吐き出してしまおうという考えだろう。ラウラは過去を、一夏は今を清算することでしか先に進めない。なら、話し合いじゃなく、そのままのお互いをぶつけあおう。ただそれだけのことだ
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