帰還そして……
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る。楯無は響がそのような反応を取ることがわかっていたのか、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
『まぁ織斑君には色々がんばってもらうとして……響ちゃんはいつごろ帰ってくるんだっけ?』
「来週には戻る」
『なるほどね、じゃあまた来週にでも』
「ああ。またな」
投影機の電源を落としながら響は楯無に対し軽く手を振った。
「さて、夕飯までのんびりしてるかな」
ベッドの上にゴロンと横になり響は携帯をいじり始めた。
三日後、響は渉と紫音と共に墓地にいた。理由は今日が響の父親の命日だからだ。響の父、鳴雨孝一は響が小学生の時に病に倒れ、この世を去った。その病とは技術が進歩した現在でも治すことが出来なかった不治の病だった。
死の間際、彼は響の手を握りながら病で疲弊しているのにもかかわらず、凛とした声音で響に言い放った。
「母さんと渉を頼んだ」と。
響はその時直感した。父がもう長くないことを、その悲しみが一気に涙となって溢れ出そうになったが、響はそれを何とか堪え笑顔を浮かべながら頷いた。彼はそれを見て安堵したのか、病気で苦しんでいる時には一度も見られなかった安らかな笑顔を見せ、眠るように息を引き取った。すぐさま医師がとんできて蘇生を試みたが、既に遅かった。
後ろで泣き崩れる渉を紫音も目に涙を溜めながらあやしていた。しかし、響はジッと父の姿を見据えていた。まるで父の姿を忘れないように目に焼き付けるように。
この時響の目からは涙がこぼれていたが、彼女は声を出して泣くことはしなかった。同時に彼女が涙を見せたのはこれが最後だった。
「さて、じゃあそろそろ帰りましょうか」
三人で手を合わせていた中、紫音が立ち上がりながら言うと二人は頷き、墓地を後にする。最後に響は父が眠る墓を後ろ目で見やりながら、
「……またな父さん」
誰にも聞こえない声音で呟いた。
そしてそれからさらに三日後。
響は自宅の前でバイクに跨っていた。傍には渉と紫音の姿も見られる。
「忘れ物ない?」
「ない」
「ハンカチ持った?」
「持った」
「ティッシュは?」
「持った……って交互に聞いてくんなよ!! 地味に疲れるから!」
声を荒げる響だが、紫音と渉は可笑しそうに笑っていた。
「ったく……」
二人の様子に呆れ声を漏らしながら響はバイクのエンジンをかける。すると、何かを思い出したかのように紫音が響の肩を叩いた。
「なに?」
「ヘルメット被んなさい。帰ってくるときはしてなかったみたいだけど……危ないからね。それに捕まるわよ?」
「えー、あれ蒸れるから嫌なんだよなー」
「つべこべ言わない。
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