第四章
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第四章
その彼等の仲のよさも知られている。そしてそれはそのまま。
「野村さんも森さんもな。二人についてはな」
「ああ、嫌いだからな」
「それも大嫌いみたいだな」
人間として嫌いなのではなくだ。その野球理論ややり方が嫌いなのだ。野村は口が悪い為全否定に聞こえたりもしてしまうがだ。
その二人がだ。とにかく言っているというのだ。
「まあ。一挙手一投足に言うからな」
「これから二人が何するかだけれどな」
「絶対によく言わないだろうな」
「そうに決まってるな」
こう予想立てられていた。そうしてだった。
東尾と野村は何とだ。誰もが驚く行動に出た。それを聞いてだ。
野村も森もだ。こう言うのだった。ただし森は表情を変えない。野村は顔を顰めさせてだ。そうしてそのうえで話をするのだった。
「何が予告先発や」
「しかも開始前に二人で店で会見だと」
「そんな話聞いたこともないわ」
「それは野球ではないのではないのか」
こう言うのだった。それぞれだ。
「あのな、手の内見せるアホはおらんで」
「それを見せては勝負にならない」
「ほんま。あの二人は何や」
「どう考えているのだ」
予想通り彼等は全否定だった。ところがだ。
東尾と権藤はここでも平然としてだ。こう言うのだった。
「勝負をやるんだぞ。それならな」
「これも当然のことだ」
こう言うのである。
「御互いに戦いの前にエールを送り合って」
「それで勝負を申し渡すのが筋だ」
二人のその言葉を聞いてだ。そうしてだった。
野球ファン達はだ。こう考えるのだった。
「これもピッチャーだからか？」
「ピッチャーだから予告先発をして正面からぶつかるのか？」
「これまた随分と変わった勝負だな」
「先発なんて作戦の基本中の基本だぞ」
誰を何処でどのチームに投げさせるか。それは野球の基本だ。それは隠すのも作戦の一つだ。だがそれでもなのだった。
二人はそれをあえて正面から名乗り合いだ。戦うというのだ。そしてそのことを宣言して横浜の中華街のある店の会見の場でだ。こんなことも言った。
「じゃあ。今日の夜の十二時で」
「我々は敵同士だ」
このこともあえて言い合うのだった。しかも二人は以降何も言わなかった。その口撃をしないこともだ。野村と森にとってはだ。
「口で言うことがまずや」
「それをしないのは間違いだ」
また言う彼等だった。
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