第3部:学祭2日目
第13話『危機』
[6/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と、自分はあれだけ桂を気にかけていたのに……。
「あんだけ、あいつが気になってたんだな……。なのに半端なところで手を引いちゃって……。情けないよな……」
独りごと。
蒲団を抱きかかえている腕が、さらにきつくなる。
律はため息をついて、つまらなそうに澪の部屋を物色する。
すると、律の携帯から音のない振動。
取ってみる。
「もしもし、あ、西園寺か」
「田井中さんですね。どうですか、秋山さんは……」
「ああ、家にいる。こっちも澪の家にいるよ。それより、桂はどうした?」
世界はしゃべらない。
律は言葉を切って、彼女の返答を待つ。
ふと一刻、沈黙の時間が流れた。
「……桂さんなら、学校に向かいました。自分が振られたのは平沢さんのせいだと思いこんでるみたいで、なんか仕返ししようとしてるみたいです」
淡々とした声である。
「っておい、唯は飛び入り参加だろうが!! なんで桂が狙うんだよ」
「でも、今誠の隣にいるのはあの人でしょうから。見境がつかなくなってると思うんです」
「……」
「おまけに、うつろな笑い声ばかりあげていて……たぶん混乱しているんだとは思うんだけど……」
律は、言葉が出ない。
「わかった」
電話を切ると、澪が律に、何があったかを聞いてくる。
「なにかあったのか?」
「澪がいなくなったせいかは分からねえけどよ、桂がおかしくなって、唯を恨んじまったみてえなんだ。
どうも榊野の方へ向かっているらしい」
「桂……!」
「私はそっちに向かうよ。ただでさえ唯は大変な時なのに、余計なごたごたを作りたくねえしよ」
「律……!」
そうか。
桂はやっぱり、自分がいないとだめなんだ……!
がばっ!!
急に澪は、起き上がった。
「律、私も行く!!」
声をかけると、律は待っていたかのようにニヤリと笑い、
「そうこなくっちゃあな。その方がおめえだって後悔しねえだろ」
早足で外へ飛び出した。
唯と引き離された誠は、1人ぼんやりと歩いていた。
今、どこにいるのかもわからないまま。
寂寞感が、ひどい。
あの笑顔は、ずっと見たかった。
そのまま楽しむのも、いいのではないかと思っていたのだが……。
気がつくと、物理部の展示室から離れて、階段を下りていた。
周りにいる人たちは、
「さっきの人だ」
「ひょっとして振られちゃったのかな?」
「気の毒だよなあ、ヘテロカップル1号成立と思ってたのに」
等と、無責任に自分勝手な話をする。
無責任なんて、人のことは言えないか。
自分も世界と言葉、そして今は唯とふらふらしていたのだから。
唯が父親に狙われていると、言い訳をして。
続いて頭によぎったのは、梓の言。
「私は認めないからね。貴方と唯先輩が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ