暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第3部:学祭2日目
第13話『危機』
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と、自分はあれだけ桂を気にかけていたのに……。
「あんだけ、あいつが気になってたんだな……。なのに半端なところで手を引いちゃって……。情けないよな……」
 独りごと。
 蒲団を抱きかかえている腕が、さらにきつくなる。
 律はため息をついて、つまらなそうに澪の部屋を物色する。
 すると、律の携帯から音のない振動。
 取ってみる。
「もしもし、あ、西園寺か」
「田井中さんですね。どうですか、秋山さんは……」
「ああ、家にいる。こっちも澪の家にいるよ。それより、桂はどうした?」
 世界はしゃべらない。
 律は言葉を切って、彼女の返答を待つ。
 ふと一刻、沈黙の時間が流れた。
「……桂さんなら、学校に向かいました。自分が振られたのは平沢さんのせいだと思いこんでるみたいで、なんか仕返ししようとしてるみたいです」
淡々とした声である。
「っておい、唯は飛び入り参加だろうが!! なんで桂が狙うんだよ」
「でも、今誠の隣にいるのはあの人でしょうから。見境がつかなくなってると思うんです」
「……」
「おまけに、うつろな笑い声ばかりあげていて……たぶん混乱しているんだとは思うんだけど……」
 律は、言葉が出ない。
「わかった」
 電話を切ると、澪が律に、何があったかを聞いてくる。
「なにかあったのか?」
「澪がいなくなったせいかは分からねえけどよ、桂がおかしくなって、唯を恨んじまったみてえなんだ。
どうも榊野の方へ向かっているらしい」
「桂……!」
「私はそっちに向かうよ。ただでさえ唯は大変な時なのに、余計なごたごたを作りたくねえしよ」
「律……!」
 そうか。
 桂はやっぱり、自分がいないとだめなんだ……!
 がばっ!!
 急に澪は、起き上がった。
「律、私も行く!!」
 声をかけると、律は待っていたかのようにニヤリと笑い、
「そうこなくっちゃあな。その方がおめえだって後悔しねえだろ」
 早足で外へ飛び出した。


 唯と引き離された誠は、1人ぼんやりと歩いていた。
 今、どこにいるのかもわからないまま。
 寂寞感が、ひどい。
 あの笑顔は、ずっと見たかった。
 そのまま楽しむのも、いいのではないかと思っていたのだが……。
 気がつくと、物理部の展示室から離れて、階段を下りていた。
 周りにいる人たちは、
「さっきの人だ」
「ひょっとして振られちゃったのかな?」
「気の毒だよなあ、ヘテロカップル1号成立と思ってたのに」
 等と、無責任に自分勝手な話をする。
 無責任なんて、人のことは言えないか。
 自分も世界と言葉、そして今は唯とふらふらしていたのだから。
 唯が父親に狙われていると、言い訳をして。
 続いて頭によぎったのは、梓の言。
「私は認めないからね。貴方と唯先輩が
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