第3部:学祭2日目
第13話『危機』
[5/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
Pは抑揚のない声で言う。「どうか、こちらの方に来てくれませんか?」
「え……どしたの」
「たった今、沢越止が来たのですよ。紬お嬢様に頼まれましてね、貴方を守るようにと」
そういうとSPは、唯の周りを取り囲むように、彼女の前後に位置する。
誠はSPに押されて、唯からはじき出された。
「あ、ちょっと、マコちゃんはそばに居させてやってよ」
「そうはいきません。それにたしか貴方は、伊藤誠さんですよね」
「ええ……」
「調べで沢越止の息子だと聞いてます。正直貴方が唯さんのそばにいたら……」
誠は顔をしかめ、
「親父とは、すでに離婚済み……縁を切っていますよ」
「そうは言ってもですね……。唯さんがあの男に狙われている以上、血縁者がいては心もとないんです。裏切らないとも限らん」
「な……! 俺だってあんなバカ親父なんか……!!」
誠は反駁するも、SPは耳をかさず、唯をつれてどこかに行こうとする。
「唯ちゃん!」
誠は思わず、彼女を追いかけていた。
が、SPが足を速めてしまい、手を引っ張られる唯もその速度になる。
「マコちゃん!!」
大声で名前を呼び、周囲の注目をひいてしまう。
SPは唯に対し、「しーっ!」というと、ふたたび唯を引っ張って行った。
誠の姿は、もう見えなくなっていた。
やがてたどり着く。3階の端っこの一つの教室に。
白いコンクリートで覆われ殺風景だが、大学の講義室のような教室。
中に、SP達と一緒に入る。
「あ、お姉ちゃん」
SP達の集まる場所に、妹の憂も来ていた。
3階にある、教室の一つだが、ここはどこの部の出し物も展示されてはいない。
ムギがあらかじめ榊野学園に連絡をし、対策のための部屋を作っておいたのであった。
「憂……」
「沢越止が、どうやらここに来たみたいで。私も安全のため、いるように言われた」
感情のこもらない声。
「マコちゃんをどうしてここに連れてこなかったんだろ……みんな……」
「伊藤さんは沢越止の息子だからね。それに正直、伊藤さんは好きじゃないから……。お姉ちゃんはここにいて、自分の安全を図るべきだよ」
「そんな……」
唯は思わず、しょぼくれてしまった。
こうしている間にも、SPたちは外に入ったり出たりして、止の対策に奔走しているようだ。
「マコちゃん……」
『秋山さん……』
『私、嬉しいんです。私のこと、心から気にかけてくれる人がいましたから……』
あの時の言葉の声が、澪の頭の中でリピートしていた。
言葉の、涙をにじませながらの笑顔も。
『桂、私の演奏、できたら聴きに来てほしいんだけど』
『嬉しい、是非とも聴いて! 「ふわふわ時間」!!』
今度は自分の言葉が、頭の中で繰り返される。
今思い返す
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ