第3部:学祭2日目
第13話『危機』
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が起こっていたなあ……。私たちが演奏した時には拍手がちょっとまばらだったし」
急に声に元気がなくなる唯。誠は思わず、
「いやいや、唯ちゃん達の演奏も良かったよ。ノリノリで。
でも欲を言えば、X-JAPANのようなバラードがあるとよかったんだよねえ、ははは……」
なんとかフォローをする。
「それもそうだね。考えとくよ」彼女は持ち直して、「あ、そうだ。奇術部のファンクラブに入らない?」
「そうだね……。あ、でも桜ケ丘の部活だし……いいのかな?」
「いいのいいの」
そのまま一緒に、奇術部ファンクラブにサインしてしまった。
そして2人は、笑いあう。
ようやく和やかで、お互いに笑いあえる時が、訪れた。
唯の笑顔を見て、再び誠の緊張感が、ほどける。
この笑顔は、誰よりも人をいやす力がある。
嫌なことを全部忘れさせる力が。
とはいってもあの父親のことが、ちょっと気になってはいたが。
「次はさ、喫茶店に行こうよ」
「いや、そこは俺達1年3組の担当。休みと言っちゃってるから、行ったら嘘がばれる」
「そっかあ……。マコちゃんの作る食べ物、食べたかったんだけどな」
「いや、俺は作れないって。……あ、その道は喫茶店につながっちゃうから、反対側行って」
「わかった」
唯ははしゃぎながら、階段を駆け上がっていく。
2階へあがると、2年の教室が左手にあり、その戸口に『手芸部入口』と書かれた紙が目に入る。
「あ、榊野手芸部! 何かいろいろと作ってるみたいだから、行こうよ!!」
「あ、うん……」
唯に手をひっぱられ、誠は穏やかに歩いてゆく。
2人は、手芸部の展示室に入った。
蝋で作ったクリスマスケーキ、市販で買って編んだと思しきマフラーに、スプレーとマスキングで派手にカラーリングしたと思しきガンダム、『金魂』の金さんのフィギュア……。
どれもこれも、作者が全力で作り上げたというばかりの出来。
奇術部と同じように、皆々がやがやと作品を覗き込んでいる。
「いやあ、みんなよく作ってるねえ!」
「ははは、そうだね」
興奮する唯に、穏やかに相槌をうつ誠。
また2人そろって、手芸部ファンクラブにサインしてしまった。
「マコちゃんも、手芸部か何かに入ればよかったのに」唯は誠の前に出て、左薬指にある銀色の指輪を見せながら、「こんな綺麗な指輪を作れるぐらいなんだから」
「そんな……男が手芸部入ったらかっこ悪いだろ……。それに俺が作れるのはそれぐらいなんだからさ……」
そんな会話をしながら外を出て、廊下を通りかかると、
「いたいた! 平沢さんですよね」
声をかけられた。
2人がそちらを向くと、2人のスーツ姿、体格のいい男がいる。
ムギのSPだ。
「平沢唯さんですよね。」S
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