第3部:学祭2日目
第13話『危機』
[12/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
頭の中はひたすらに、誠のことを思っていた。
「マコちゃん……」
憂は彼女をちらちらと見ながら、同じように部屋の様子をうかがっている。
SPたちは、外に気を取られて自分のことには、気づいていないようだ。
いてもたっても、いられなかった。
憂がちらりと、こちらから目をそらしたすきだった。
唯は立ち上がり、速足摺り足で教室から出て行った。
「憂……憂がなんと言おうと、私はマコちゃんが好きだからね」
小声で言うと、そっと教室を出ていく。
床がタイル、天井がコンクリートでできた廊下では、相変わらず榊野と桜ケ丘の生徒がたむろしている。
唯のすぐ横で、背の高いボーイッシュな少女が、恋人と思しき長身の男性と手をつないで歩いている。
他の人たちも、一人であれカップルであれ、彼女を気にせず歩いている。
マコちゃんは、どこいったんだろう。
SP達のいる部屋から、ある程度離れた後、唯はさりげなく携帯を取り出した。
電話をかけてみる。
……
が、通じない。
「マコちゃん……返事してよ……!」
そして、3年2組の教室を通りかかり、階段を降りようとした時、
「見つけたぞ」
すぐ隣で、低い声を耳にした。
そちらを向くと、沢越止。
長髪に革ジャン、長い髪をなびかせる。
「!」
あわてて逃げようとするが、韋駄天のごとく止に追いつかれ、そのままどこかへと肩を掴まれ連れて行かれる。
「そんな! やめてください!! 離して!!」
「そうはいかないな。悪いが静かにしてもらおうか」
続いて脇下に、刺すような妙な痛みが走る。
体が急にしびれて動けなくなり、止にいいように押され、連れて行かれてしまう。
『3年2組』と書かれた部屋に。
部屋の中は薄暗がりで、よくわからない。
暗闇の中見えたのは、保健室にあったものと思しきベッド、一式のハンガー、それに、くしゃくしゃのティッシュがぎゅうぎゅうに詰め込まれた茶色のゴミ箱。
どうやら榊野の伝統と思しき『休憩室』のようだが、なぜかSPが配置されていない。
この部屋の存在に気づいていないのか。
十分に動かせない体でそのまま、ベッドのところまで連れて行かれる。
「お姉ちゃんっ!!」
と、後ろから聞き覚えのある声。
憂であった。
どうしてここが分かったのか。
そう考える間もなく、憂は止を後ろから羽交い絞めにし、強引に唯から離す。
火事場の馬鹿力である。
唯は脚に力が入らず、そのままベッドの上に倒れる。
その拍子に、ポケットの中の携帯が、ベッドのすぐ下に落ちてしまう。
「お姉ちゃんに何するんですか!!」
「うるさい!!」
2人はベッドの横で、組み合って争い始めた。
何とか腹筋を使って、唯が上体を起こした時
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ