第一話
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は激減……というか、ゼロになった。……なった、のだが。
―――そこに、依頼人がいるからよ。今回はちょっと、急ぎの用事でな。
シド……あの胡散臭い情報屋はそう言った。
―――まあ、今のお前にはちょうどいいんじゃないか。
そう続けられたのが、なんともいやな予感しかしないのだが。
ついでに言うのであれば、その予感を裏付けるものが、ちらほらと。
「なんで人がいるんだよ……」
このダンジョン……『闇夜の紅館』は、お世辞にも主街区から近いとは……というか、思いっきり交通の便最悪だ。どこでどう道を間違えたってこんなところには来やしない。つまりは、「明確な目的なしには来るはずのない」場所なのだ。
嫌な予感はますます強まる。
「警戒心、バリバリだしよ……」
すれ違うプレイヤー達が、ことごとく周囲を厳重に警戒しているのだ。幸いにもプレイヤー達のレベルが大したことが無いのだろう、俺の『隠蔽』スキルが抜かれることはなかったが、それでも見ていて気分がいいものではない。
そして、待つこと半刻ほど。
シドに指定された時刻、午前二時。「一分一秒も狂いなく頼む。特にフライングは厳禁だ」という助言に従い、俺はその毒々しいというか妖艶な雰囲気(まあ、今の俺なら何を見たってそんな風に思えてしまうのだろう)の扉をノックする。
「……」
返事はおろか、何か物音らしきものすら聞こえない。……だが、それが「OK」のことなのだと俺は前もって聞いていた。……思えばこの時、「万が一中から声やあわてたような音が聞こえるなら入るな。お前自身のために」というセリフ、あれもおかしいと思うべきだった。
がちゃり、とドアノブを回し。
ぎぎぎ、と古典的な音を立ててドアが開く。
「っと、久しぶりだな……邪魔するぜ……」
もうどれくらいぶりになるのか分からないその『狩り場』に、一歩足を踏み入れて。
「っっっ!!?」
唐突に体を襲った浮遊感に、俺は顔を顰めた。
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