第一話
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にもう一回ね! さ、Mob引っ張ってきて!」
「ああ分かった、ちょっと待っててくれ」
興奮した様子のアスナ。そんなアスナとは違う意味での興奮を悟られないように、俺はそそくさとMobのポップ点へと向かう。アスナのほうは、はっきり言ってそれに気づいている様子が全くないのが、俺の罪悪感を加速させる。
(……もう、限界だ……)
この新手の拷問が、かれこれ一時間。
身のこなしを指導する以上、目線を逸らすわけにもいかない。
無論、それを教えるためと割り切る精神力など、俺にありはしない。
俺の精神力はもう、完膚なきまでに叩き崩され、ピンク色にハレーションがかかって輝きまくっていた。そんな状態で、もうこのSAOでの時間で鍛えられた条件反射だけでMobを惹きつけ、そのままアスナの下へと駆ける。
跳躍する彼女。
振り抜かれるレイピア。
眩く翻るスカートと、その下の魅惑の純白の逆三角。
彼女の笑顔とエフェクトの布地が、脳裏で交互にフラッシュバックした。
◆
「はあ…………」
深い、本当に深いため息をついた。
長く、厳しい戦いだった。
もはや最後のほうには自分の意識も朦朧としていた。
ただ、アスナが何かに気づいたような様子がなかったことだけが救いだったろう。
よかった、一応彼女の前ではいつもの自分でいられたのだ。
それだけで完全にやりきった気分だった。
「ああ……白、だったな……」
たとえ俺の網膜、脳裏、いや魂にもそのエフェクトが焼き付いていようとも。
これはおそらくもう、数日は消えない。それは仕方ない。俺は多大なる犠牲と引き換えにレディーの幻想を守りきり、貴重(自称)な技術である空中ソードスキルを伝道したのだ。この犠牲として、俺が数日の攻略サボりを行ったとしても、誰が俺を責められるだろうか。
いや、責められまい。
「逆三角、だったな……前はホットパンツだったのに……」
完全にピンク色の思考に染まった思考で、ぼんやりと考える。
「ああ……なんであんな布地一枚にこんなになるんだろうな……男って……」
危ない思考丸出しの状態で、町はずれの安全エリアの公園で大の字に寝そべったまま、熱に浮かされたようにつぶやく。誰かに聞かれようものなら『悪のビーター』の代名詞たる『黒の剣士』の名前が『ピンクの剣士』に変えられかねない。だが、そんなモノも気にならないほどのやりきった感に俺はあふれていた。
そう、このやりきった感で、俺は油断していた。
油断していたのだ。
「おーう、キリト、探したぜ」
「あぁ? なんだよ、人が気持ちよく寝てる時に……」
「お? なんだなんかいい事で
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