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ドラゴンクエストX〜リュカとサトチー〜
第6話 オッサン
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「あー魔王っていうのは嘘な」

「ええっ!?」

 洞窟に入って20分ほどして唐突にサトチーにいさんが言い出した。
 あっさりしたもので、悪びれることもなく笑っている。といってもサトチーにいさんが適当なことを言うのはいつものことなので、ぼくもすぐに諦めた。

「でも、じゃあおとうさんはなんでこの洞窟に入ったの?」

 さあな、なんて言ってサトチーにいさんは答えようとしない。じゃあ、ぼく達勝手に洞窟に入ったりして怒られないかな?
 でも、サトチーにいさんは、ぼくの心配もよそに軽快な足取りで奥へと進んでいく。

「おっ」

 サトチーにいさんが嬉しそうな声を上げる。その視線の先には一匹のスライムがいた。暗がりでよく見えないけれど、なんだかすごくプルプルしてる。

「ふっふ。草原では情けない姿を見せちまったからな。ここで汚名挽回だカミーユ」

 カミーユって誰? と、ぼくが言うより早くサトチーにいさんが身構えた。

「おまえは……おれのぉぉぉぉぉぉ!」

 叫びながら木の棒を振り上げる。けれど、ガシっと乾いた地面を叩く音が響くだけで、スライムは身軽にかわした。サトチーにいさんは諦めずに、ぶんぶんと棒を振り回すけれど、一向に当たる気配は見えない。
 少しして、サトチーにいさんは大きく息を荒げていた。

「ぜぇっ……はっはぁ……や、やるじゃねえか」

 スライムを睨み付けて言うが、木の棒を持つ手がスライムみたいにプルプル震えている。けれど、そんなサトチーにいさんをスライムは一向に攻撃してこない。さっきから逃げ続けているだけだ。
 そして、ぼくは何だかさっきから、もやもやした気持ちがしていた。だから、サトチーにいさんに言った。

「ねぇサトチーにいさん。もう逃がしてあげようよ」

 スライムはさっきからピギーって叫び声を上げているけれど、ぼくにはその鳴き声が怖いとは思えなかった。むしろ、逃げようとしているようにも聞こえた。

「あーん?」

 サトチーにいさんはぼくを睨み付けたけれど、すぐに思案顔になって、うーんと唸ってから結局は頷いてくれた。

「ほら、もう行っていいよ。怖い思いさせちゃってゴメンね」

 ぼくとサトチーにいさんのやりとりの間もやっぱりプルプル震えていたスライムは、ぼくの言葉が分かったのか嬉しそうに鳴いた。そして逃げていくとき、ぼく達のほうを振り返って、大きくピョコんと飛び跳ねた。

「なあ、リュカ。俺にはピギーピギーとしか聞こえなかったけど、オマエはアイツがなんて言っているのか分かったのか?」

 スライムがいなくなってサトチーにいさんがそう問いかけた。ぼくにも同じようにしか聞こえなかった。でも、なんだか、良く分からないけれど、なんて言っているのか、なんて言い
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