暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜黒衣の魔導剣士〜
第10話 「別れの時」
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「だけど……生み出してもらってから今までずっと……今もきっと……母さんに笑ってほしい。幸せになってほしいって気持ちだけは本物です」

 優しい声色で発せられた言葉と共に、プレシアに向かってテスタロッサの手が差し伸べられる。それにプレシアの強張っていた表情に変化が現れた。

「これが私の……フェイト・テスタロッサの本当の気持ちです」
「……ふ、くだらないわ」

 その言葉にテスタロッサは声を漏らしたが、俺には今までのプレシアとは違ったように思えた。テスタロッサに返事を返す前に、ほんの少しであるが間があったからだ。
 プレシアは俯いたまま杖で地面を叩き、ジュエルシードを発動させた。それによって庭園の崩壊が加速したようであり、その被害はこの場にも及んでいる。
 エイミィから脱出の催促が来ていることからも間違いがない事実だ。彼女に返事を返したクロノは、俺達に向かって話しかける。

「フェイト・テスタロッサ!」
「…………」
「フェイト!」
「…………」
「――ッ。ショウ、聞こえているんだろ! フェイトを連れて脱出しろ!」

 クロノの指示は間違っていない。だがテスタロッサとプレシアのやりとりを見届けるまでは、脱出するわけにはいかない。
 崩壊の中。プレシアはそっとアリシアの入ったカプセルに寄り添う。彼女の視線は、アリシアではなくテスタロッサの方へと向いている。

「私は行くわ……アリシアと一緒に」

 それはあくまで俺の主観になるが、拒絶の言葉ではなくて別れの言葉のように感じた。

「母さん……」
「言ったでしょ……私はあなたが大嫌いだって」

 大嫌いだと言いながらも、プレシアの声色はこれまでのもの違って優しいものであり、顔も見方によっては微笑んでいるようにも見えた。それと同時に、ふと嫌な予感がした。
 次の瞬間、プレシアとアリシアのいる付近が崩壊し始め、テスタロッサはふたりの名前を呼びながら駆け寄ろうとする。しかし、それは落下してきた巨大な岩石によって阻まれた。

「……いつもそうね……私は気づくのが遅すぎる」

 テスタロッサよりも先に動き出していたこともあって、俺はプレシアの腕を掴むことができていた。彼女は走馬灯でも見ているのか、独り言を呟いている。

「気づけたのなら……変わればいい」
「――っ!? ……あなた……何をしているの?」
「聞かなくても……分かるはずだ」

 重い……プレシアの身体には全く力が入っていない。
 アリシアと共に死ぬつもりでいるから……という理由だけじゃないだろう。ロストロギアを用いた不確定なやり方や先ほどの吐血からしてプレシアは病を患っている可能性が高い。身体に力が入らない状態でも不思議ではない。

「……放しなさい。このままだとあなたも死ぬわよ……
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