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久遠の神話
第七十七話 百億の富その十五
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れて」
「うん、百億にして何処か信用出来る銀行に預けて」
 王はその銀行のことも話した。
「映画みたいにスイス銀行かな」
「スイス。あの山と谷の国ですね」
「知ってるかな」
「少しは」
 智子はこう王に答えた。
「ローマの時代に行ったこともあります」
「ローマ帝国の頃だね」
「あの頃あの国はローマの中にありました」
 今で言うイタリアだけではない、スペインやフランス、ドイツ、イングランドにオーストリア、バルカン半島全域ルーマニアに至る欧州の国々がローマ帝国の領土だった。エジプトや小アジアに北アフリカ沿岸もである。
 そのローマの中にだ、スイスもあったのだ。それでローマで信仰されていた智子も言うのだ。
「その頃の私の名はまた違いましたが」
「確かミネルヴァだったよな」
「はい、本来は違う女神の名でしたが」
 こうした説があり智子もこう主張する。
「ローマではその名で呼ばれていました」
「そうだったよな、その時にか」
「あの国、その頃は国ではなかったですが」
「行ったことがあるんだな」
「緑と青の世界でした」
 スイスはその頃からこの二色だったというのだ。
「そして白も」
「雪だね」
「そうした世界でした」
「今と変わらないかな、とにかく」
「はい、その国の銀行にですか」
「預けようかな、あそこは確かな銀行が多いしね」
「そうされますね」
「日本の銀行はよく知らないけれど」
 この前置きからだ、王は言う。
「中国の銀行はね」
「信頼出来ないですか」
「そうだよ、祖国の銀行だけれどね」
 それでも信頼出来ないというのだ、このことは残念そうな笑顔で言う王だった。
「どうもね」
「そうですか、だからですか」
「財産だからね、私の」
 それも望んでいたものである。
「信頼、完全にそれが出来る場所に置くよ」
「ではそのことは」
 ここで智子はそのスイスの銀行で何処がいいかも話した、王もそれを受けて答えた。
「わかったよ、それじゃあそこにするよ」
「はい、それでは」
「そこまで教えてくれてくれるなんてね」
「適えた願いは果たされなければなりません」
 この考えからだ、教えたというのだ。
「そうさせてもらいました」
「それではね」
「後はその適えた願いと共に生きて下さい」
「是非そうさせてもらうよ」
 王はその百億を受け取りだ、女神達が力で呼び寄せたリアカーに乗せてそのうえで自分の家に運んだ。そして次の日に早速現金に換えてスイスのその銀行に預金した。こうして彼の戦いは完全に終わったのだった。


第七十七話   完


                   2013・8・3
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