第七十七話 百億の富その十二
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地面を柱が次々に立っていった、下から上に。
そしてそのうちの一本が巨人の足の裏を撃った、だが。
地の底から音がした、何かが折れる鈍い金属の音だった。
その音を聞いてだ、王は笑って言った。
「足の裏は弱点だと思ったけれどね」
「残念ですが」
今度は智子が答えてきた。
「この巨人のサンダルですが」
「ああ、これだね」
見れば巨人は素足ではなかった、しっかりとサンダルをはいている。古代ギリシアのあのサンダルである。
それはただのサンダルではなく夜の中で黄金に輝いている、それこそは。
「金属、しかも只の金属じゃない」
「オリハルコンです」
伝説の金属の名であった。
「それで出来ています」
「この巨人が自ら作ったものかな」
「その通りです」
火と鍛冶の神ヘパイストスの助手である彼がだというのだ。
「その彼が自ら作ったものです」
「成程ね、だからなんだ」
「はい、普通の金属ではです」
貫くことは出来ないというのだ。
「ダイアをも上回る硬さですので」
「傷つけることもできないね」
「その通りです」
攻撃をかわし続けながら話す王に応えての言葉だ。
「それは」
「成程ね、足の裏も駄目か」
「そしてその身体も」
あまりの強靭さ故にだ、それもまた無理だった。
だがそれでもだ、王の目は死んではいなかった。今の攻撃を防がれてしまったがそれでもまだそうはってはいなかった。
その目でだ、こう言ったのである。
「私の剣は金だったね」
「そうですが」
「その力です」
聡美と豊香が答える。
「それが何か」
「あるのですか?」
「あるから言うんだよ」
こう余裕の声で返すのだった。
「そう、金だね」
「?そうですか」
ここでだ、最初に気付いたのは智子だった。智恵の女神であるだけに鋭かった。
「貴方のその剣を」
「オリハルコンを貫けるのはオリハルコンだけだね」
「その通りです」
「この剣は私の力に合わせて金属を変える」
それがこの剣の力だ、ただ金属を自由に出して操るだけでなくその金属を選ぶことも出来るがこの剣の力だ。
「ということはね」
「その剣で、ですか」
「オリハルコンを出してね」
そうしてだというのだ。
「使わせてもらうよ」
「そうされるのですか」
「うん、そうだよ」
まさにそうするとだ、王は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「私の全力を使ってね」
「そうされますか」
「うん、今からね」
まさにだ、そうするというのだ。
「そうするよ」
「しかしオリハルコンは」
智子の声が顰められた、その眉も微かに。
「オリハルコンは」
「この世のものではないね」
「ダイアよりもです」
さらに扱うことが難しいというのだ、それも遥かに。
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