第五十三話 音楽喫茶その十
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五人で発掘を続けた、すると。
とにかく阪神のものが多かった、帽子にユニフォームに半被に。
色々あった、昔のものも含めて。それで美優は言った。
「これだけあればな」
「そうよね、人数分どころかね」
「もっとあるわよね」
「これだけあればね」
「心配いらないわね」
四人も美優の言葉に頷く、本当に心配無用な程だった。
しかしだ、ここで。
琴乃はある帽子を見付けた、それは黒いOのアルファベットの帽子だった。その帽子を見てこう言うのだった。
「こんなのもあったの」
「大昔のユニフォームよね」
彩夏もその帽子を見て言う。
「前に復刻で着てたわね」
「そう、黒いユニフォームね」
「それのもあるのね」
彩夏は唸る様にして言うのだった。
「凄いわね、ただ」
「ただって?」
「これ被るの?」
彩夏は琴乃に顔を向けてこのことを問うた。
「そうするの?」
「ううん、どうしようかしら」
「私的には今の阪神帽かと思ってたけれど」
「うん、そうよね」
「それと阪神の半被でね」
これも今の阪神のものだ。
「そう考えてたけれど」
「私もだけれど」
「じゃあこの帽子はどうするの?」
「保留にしておく?」
琴乃はこう彩夏に返した、考える顔で。
「そうする?」
「そうね、やっぱり第一は今よね」
「それか縦縞のか」
長い間ホームのユニフォームだったそれだというのだ。
「あれもいいから」
「阪神のユニフォームっていっても何種類もあるから」
ホームとビジターがある、それも時代と共にモデルチェンジしていっているからだ。阪神のユニフォームといっても一口では言えないのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、それでね」
「縦縞なのね」
「これが一番よくない?」
琴乃は四人にその縦縞の帽子を見せる、阪神ファン達が馴染んできたシンプルながら秀逸のデザインのそれをだ。
「やっぱりね」
「そうね、確かに」
「オーソドックスでね」
「甲子園っていったらこれで」
「ずっと親しんできたし」
「そうでしょ、じゃあね」
琴乃は四人の返事にいいものを掴んで笑顔で応えた。
「これで決まりね」
「よし、じゃあ後はな」
美優はリーダーとして帽子はこれでよしとした、そしてだった。
半被を右手に出してだ、四人にこう言った。
「これも着てな」
「普通の衣装はどうするの?」
「それはもうシンプルにいくかい?」
美優は半被の下については無頓着に返した、そのうえで彼女が出すものとはというと。
「制服でさ」
「制服の上に半被を着て野球帽ね」
景子は美優の話を聞いてこう言った。
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