表層人格 〜夏目another side〜
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私はずっと悶々としていた。
それは契約について。
私は確かに契約者の候補の一人として雪村君を見染めていた。けれどそれと実際に契約を結ぶのは別次元の話だ。
契約をするとたがいに運命の輪を同じにして生きていくことになる。切っても切れない関係になる。つまり、一方が不幸になれば一方も不幸になるし、一方が死ねばそれに寄り添うかのように一方も息を引き取る。
普通の一般人における結婚なんてものより圧倒的に重い儀式なのだ。
私は自分のことを慎重派の人間だと思っている。けれど、時々意味も無くハイな気分になってしまったり、好戦的になってしまったり、暴走してしまうことがある。
それらの状態の時私は決まって記憶がはっきりとしていない。まるで体の一部分を違う何かに乗っ取られたかのような気分になる。それが本当に恐ろしくて、怖い。
それだけではない。記憶が完全になくなっている時もある。
――多分、その時の私は私の知らない別のわたしになっているのだろう。
私はそんな状況になっている理由が分からない。
知らないということは罪なんだと思う。知らないからこんなに不安な気持ちにさせられるし、知らないから対処のしようが無いのだ。
そんなことを考えながら家に辿り着くと――
――――ああ、なんでだろう。記憶が途切れ、そして意識を失った。
「あら、梢ちゃんじゃない。――そろそろ来ると思ってたわ」
あたしは優しい声で雪村梢に声を掛けた。
梢はあたしを恐れているようだ。その目を見ればわかる。
うふふ、わたしそんなに怖くなんかないのにね?
梢を家に迎え入れてからあたしは話を切り出した。
「何か用かしら」
本当は何の用かなんて知っているけれどね。
梢は一呼吸置いてから話し出した。
目からは恐怖が消えている。
恐怖している顔がたまらなくゾクゾクして面白いのに……残念だわ。
「先輩はにぃに会ってるね」
「ええ」
「何をしたの」
「すこーし会話しただけよ」
ふふっと微笑んでみた。
そうしたら梢はあたしから目を逸らした。
「気持ち悪い笑いかたしないで。――悪魔もいたでしょう、会話しただけで済んだとは思えないけれど」
「闘ったわよ。蹴散らしてやった」
「そのときにぃはどうしてたの」
「一緒に闘ったわよ。あたしたち契約したもの。彼にも悪魔と闘うくらいの身体能力はあるわよ」
そう言うと梢の顔が険しくなった。いや最初からずっと険しい表情だったけれど更に険しさを増した。
「――なんてことをッ」
相当怒っている様子だ。何かマズイことを言ってしまっただろうか。
「にぃには魔法を知らないでいて欲しかった。純粋なまま、こんな
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