名探偵ヤン艦長の推理 人形師のお宝を探せ その一
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り立てた。
「マスターコンピューターか?
欲しけりゃくれてやる。
探せ!
惑星ナーサティアに私の全てを置いてきた!」
銀英伝世界には惑星ナーサティアは存在しない。
だが、銀英伝世界にはインド神話にちなんだ名前も多く、今、ヤンが居るシヴァ星系なんてのがあったりするから、辺境星系は一時この手の一発当てたい連中で好景気に沸いた。
その好景気は帝国の再侵攻まで続いて辺境星系が友愛党政権を見捨てるとどめとなったりするのだがそれは別の話。
そんな訳で、いまだ財宝伝説くすぶるこの地はならず者達の楽園としてあちこちに不法コロニーや廃棄ステーションなどが存在している海賊達の母港と化しているのだった。
現役の海賊たちがリッテンハイム戦役時に宇宙の塵と化し、新たな海賊がまだ育っていない今が格好のガサ入れのチャンスで、今回の作戦は星系政府および同盟捜査局との合同作戦の形をとっている為、帝国軍が出て来たらやっかいな事になる。
なお、政争に敗れた帝国貴族の逃亡先にもなっているから、過去シヴァ星系では戦隊規模での戦闘が発生していた。
「かれこれ数十年近く探索が続けられている宝探しだ。
大体探し尽くしただろうに」
「出て来るとしたら財宝より、亡命貴族でしょうな。
しかし、この間の戦いで派手に勝っているのだから、こんな場所で勲功稼ぎをしますかね。彼は?」
ヤンのぼやきにパトリチェフ副長が返すが、ヤンの顔は硬いままだ。
彼は出てくる。
なんなくそんな気がしたのはヤンもまた英雄なのだろうが、それはヤン自身が認めたがらないだろう。
「財宝うんぬんはともかく、彼は勲功を稼ぐ理由があるんだ。
帝都に戻って政争の果てで粛清されない為にね」
自分の考えをまとめるようにヤンはつぶやく。
ベレー越しに頭をかくのは、彼の脳がフル稼働している証。
「彼は現皇帝の寵妃の弟だ。
そして、現皇帝は老人で、帝国はまだ後継者を擁立できていない。
皇帝が亡くなって真っ先に後ろ盾が消えるのが彼なんだ。
だから、先の戦いでの勝利で領地を確保して地盤を得たが、今度は多数派工作にて生き残る為の材料が居る。
海賊に落ちぶれた元帝国貴族あたりからいろいろ帝都の醜聞を聞き出すのは今後に関わってくるだろうからね」
そのヤンの説明にアッテンボローが茶々を入れ、傍で仕事をしていた航海長のアルテナ少佐に突っ込まれる。
「ロマンが無いですな」
「惑星一つ領有する伯爵家の提督にとって、財宝程度は目を見張るものではないと思いますよ」
「違いない」
艦橋に広がった笑いの声にヤンも釣られて笑い、副官が差し出した紅茶の紙コップを受け取って軽口を叩く。
なお、その行為自体は財宝伝説が公表されてから、
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