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立派な人
第五章
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か。関西の私鉄のだな」
「他にも阪急と南海があるけれどね」
「それは知ってるけれどな」
 野球を知らなくても当時の関西の私鉄がそれぞれ球団を持っていたことは知っていたのだ。京阪以外の会社が球団を持っていた時代なのだ。
「そうか。近鉄の監督さんだったんだな」
「西本幸雄さんっていうんだ」
 息子は父に西本の名前も話した。
「その人が引退するんだ、監督をね」
「そうか。それにしてもな」
「立派だって?」
「ああ。随分立派な人なんだな」
 スーツの西本を見ての言葉だった。
「顔の相がとてもいいな」
「顔の相ね」
「人間ってのは生き方が顔に出るんだ」
 これは本当のことだ。実際に碌でもない生き方をしている人間は人相が悪くなる。そうした輩は残念ながら何時でも存在している。
「けれどこの人はな」
「チームを何度も優勝させた人だけれど」
「そうした実績以上のことをやってきた人だな」
 西本の顔を見て話すのだった。
「そうした人なんだな」
「確かにね。選手の人達も皆慕ってるし」
「わかるよ。これだけ立派な相の人ならな」
 こう言うのだった。西本を見てだ。西本幸雄、この立派な野球人の記録、そして記憶は永遠に残るものである。野球がこの世にある限り。


立派な人   完


                         2011・12・1

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