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Fate/InterlaceStory −剣製の魔術師−
第三話 〜定義の履き違え〜
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――その経過で月村邸の至るところに仕掛けられていた銃器や罠に出来るだけ気がつかないふりをしながら。
 
「――事情は分かったわ。そこまで話してもらったのにこちらは何も無し……なんてのはフェアじゃないもの。――いるんでしょすずか。こっちに来なさい」

 忍の呼び掛けに隅でビクリと震えた気配がし、そしてそこからおずおずとおとなしそうな雰囲気の娘が彼女の隣にやって来た。

「お詫びに私からも秘密を明かします。私や隣にいるこの子――すずかは夜の一族と呼ばれている吸血鬼なの」
「……吸血鬼?」

 思わず問い返した士郎に恭也の腰が少し上がった。
 普段の士郎にしては珍しく驚いたような、そして険しい反応が現れたからだ。
 そこまで言うと忍はすずかに少し強い視線で促す。これは彼女の問題ではなく妹であるすずかにこそ触れてほしいもののようだ。
 不安そうにこちらを見ていたが、すずかは少しずつ自身のことを話はじめた。
 彼女は夜の一族としての血を受け継いでおり、身体能力などは常人よりも相当に高く、生きるためには血を――特に異性の血を吸う事が必要なのだという。
 だがすずかは人から直接吸った経験などなく、輸血用の血液などを融通してもらって血を摂取する事で体調を保っていて、そうした秘密を親しい友人にも話していないとのことだ。
 そこまで聞いた士郎は疑問に思っていたことを尋ねる。

「――話は分かった。その上で聞くが……血を吸われた人は吸血鬼になるのか?」
「ううん。ちょっとした貧血になるだけ。しばらくら倦怠感に包まれるとは思うけど…」
「そうか……」

 その言葉に士郎は安心したように頷く。

「血を吸う化け物なんて……普通の人は怖がりますよね…」

 今にも泣きそうな顔ですずかは士郎を見る。こんな事など聞かなくても分かりきった事だろう。
 普通の人なら必ずその問いに肯定を示すか、もしくは自分を避けるかのどちらかを選ぶに決まっているからだ。
 そんな気持ちを持っていながらも答えだけはほしい彼女は静かに士郎の顔をうかがっていた。
 必死に何かを堪えているのか、身体は小刻みに震えていて、両手はきつく握り締められていた。

 ――ああ。そのために彼女は苦悩していたのだろう。きっと今までも寂しい思いをしたのだろう。
 ……だけど彼女は一つ理解できていない部分がある。

「――それを聞いて安心した。間違いなくすずかは化け物なんかじゃない。そもそも化け物とは理性を持ちながら人を弄んだりして快楽を得る存在の事だ。――未だに血を吸う事に嫌悪感を持ち躊躇しているような優しいすずかとソレは大きくかけ離れている」
「でも血を吸うのですよ?これが化け物じゃないなんて…」
「それでも、だ。すずかはすずかであって決して化け物などではない。そ
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