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Fate/InterlaceStory −剣製の魔術師−
第三話 〜定義の履き違え〜
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生きてきた……か」

 その言葉を噛み締めるように呟くと、士郎は瞳を瞑った。
 その横顔は何かを懐かしんでいるようにも、そして悔やんでいるようにも見える。

「――なりたいものがあった。そのためか今までの大半を紛争地帯への介入に費やし戦い続けていたな。全ての人が笑っていられるような…そんな世界にするために」
「――成る程な。道理で戦闘に手慣れていた訳だ」

 納得したように恭也は頷くが、その瞳からは未だに険を宿したまま。
 士郎の経緯については信用に足るものだが、それだけでは警戒を解くには至らない。
 士郎の戦闘の一部始終が彼には見えていたのだが、不可解な部分があったのだ。
 
「――あの時、外套から六本の剣を抜き取っていたな。あの剣……『どのようにして』出したんだ?あのような長剣、どんなに隠蔽してもお前の身長で隠しきるのは不可能だ」
「……やはり無理があったか。――まあ当然と言えば当然だが」

 士郎は自身の背丈を見て改めて苦笑する。
 元々本来の身長で隠せるのがやっとといった所だ。それを今の身で六本――どう考えても柄か刀身の一部がはみ出るに決まってる。
 改めてこの携行手段の非効率性を実感しながらも、彼に緊迫した様子は見られなく、逆に覚悟を決めた様子で姿勢を正した。

「――信じるか信じないかは任せるが俺は魔術師…いや魔術使いといった存在でな。魔術という神秘を行使する存在だ。あの時の剣は投影魔術というもので取り寄せただけに過ぎない」
「……魔術師、ね」

 普通なら一笑に伏すであろう彼の言葉に、恭也は納得した。でなければあの剣についての説明がつかないからだ。
 
「相当に閉鎖的な人種でな。正直なところ何処に籠ってるのか見当もつかない。顔を合わせた事はあるが、そのどれもが俺を始末するために追ってきた連中だったから……な――」

 ……そう。
 いくら一子相伝の伝承魔術と言っても、世界中に魔術師が多く存在することは知っていた。
 倫敦に魔術師を教育する場である時計塔という拠点が存在するくらいだ。
 一時的であったが魔術の師である遠坂凛が士郎をそこに連れていこうとしたこともあった。
 士郎はそれを断り自分なりに世界を回っていたのだが、皮肉なことにそこの封印指定の執行者達に追われる事になったのだ。

「――いいのか?そんな事を俺達に話して」
「ああ。俺は秘匿に関してはさほど重要に思ってるわけではないからな。言い忘れていたが魔術使いは魔術師と違って目的のために神秘を行使するだけの人種だ。故に俺は人助けの為には神秘の漏洩もいとわなかった。――まあこれが命を狙われるようになった所以だろうがな……」 
 
 我ながら自分の馬鹿さ加減に呆れるよ――そう苦笑しながら士郎は窓の外から天の星空を眺める。
 
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