第一物語・後半-日来独立編-
第六十五章 強くあるために《1》
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どちらかを選ぶとしたら必然と強い方を選ぶ。なんら不思議ではない、当たり前の選択だ。
「いいだろう。もう、恐れないさ……竜神にも、この力にも。ましてや目の前の敵にもな」
奏鳴は真っ直ぐ前を見詰め、竜神の背を捕らえた。
現実世界に現れた神は、本来の姿をしていないことが多い。
これは現実空間を破壊させないため、自身を構成する流魔が削れ、変化するためだ。
目に見える竜神の姿は本来の姿ではないかもしれない。
本来の姿を知る者は誰一人としていない。だからどれが本来の姿なのか判断出来無い。されど竜神には変わりないのだ。
越えてみせる。
そう奏鳴は思った。
新たに生まれ変わった自分を証明するために、手にした刀、政宗を強く握る。
深く一息。
心を落ち着かせ、時を待つ。
無闇に力を使ったところで無意味だ。ここぞという時を見極め、最大の一撃を放つ。
セーランと手を繋いだ時に生えた双の角。
奏鳴に竜神の血が流れているのを示しているものであり、同時に神人族であることも示している。
二つの角が本人は気付いていないが、微かに淡い光りを放つ。角の形をした結晶は何処と無く脈打つように光りが強弱を繰り返し、奏鳴の鼓動と同じ動きをしていた。
意識を集中させ、奏鳴は限界まで竜神の力を引き出す準備を整える。
そして、時は来た。
●
美しい双の角にひびが走り、前置きを入れずに途端に砕け散った。
冷たい音が鳴る。
皆は見た。
角が砕ける瞬間を。また奏鳴が目をそっと閉じる時を。
「なんか、風が強くなったか?」
誰かが言った。
その言葉を聞き、数人、また数人と風の流れに感覚を傾ける。
強風のように強くははないが、吹く風は彼らの身体を確かに打った。
一番先に変化を敏感に感じ取ったのは、奏鳴と正面から距離を離し相対する央信であった。
危機感に近いそれを感じ、粘る汗がにじみ出る。
圧倒的な存在が来る。
「このままでは」
負けてしまう。
内心焦り、事態に対処するための術を考える。
数日前の自分よりも、今の自分の方が格段に弱くなりつつあるだろう。
天魔に、この身を侵食されている証拠だ。
あまり天魔の力を使うことは得策ではない。が、神に対抗出来るのは神のみ。たかが人族でどうこう出来る話しではない。
ならばやらなければならない。
苦い顔をした央信は思い、覚悟と共に行く。
「例えこの身が蝕まれようとも、やなればならないのだ!」
言い放った後、天魔が央信のなかへと流れ込んだ。
繋がりを強くすることで、より強力な力を得るために。
瘴気に犯されるような、喉元を締め付けられるような感覚を得た先。
央信の身体半分に黒い模様が走った。
左の素肌から見える不気味な模様
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