第一物語・後半-日来独立編-
第六十五章 強くあるために《1》
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まった。けど嬉しかった。
「皆が一丸となって私のためにしてくれたことが、嬉しかった。すまない、そしてありがとう」
奏鳴の言葉を聞き、辰ノ大花に生きる者達は思った。
こちらこそ救えなくてごめんね、と。
日の光が照り付けるこの時。
とても温かく太陽光が身体を照らし、喉かな気分になる。平和ボケを起こしそうな程に。
しかし今がどんな状況なのか。
分かっていたからこそ、奏鳴は決着を付けるための前置きの言葉を言う。
「私に生きる意思を取り戻させてくれた日来長、幣・セーラン。私は、彼のことが好きだ。まだ関わった日は浅いけれど、それでも彼のことを愛せると誓える」
彼とはまだまだこれからといった感じだ。
未熟な自分と一人進んでいく彼。
しばらくは横にいて、彼に付いていくだけかもしれない。けれど、何時かは彼を導いてやりたい。
救われたお礼として、今度は自分が彼にして上げるのだ。救いを。
そのためにも、辰ノ大花という小さな世界にいたのではいけない。
世界を見て、成長し、帰ってくるのだ。
雛もいずれかは巣立つように、自分も辰ノ大花の地を離れ、再び帰ってくるその日まで大きく成長する。
だから。
「この辰ノ大花を去り……私は、彼、幣・セーランと共にあろうと思います。一人の女性として、愛する者の隣で可憐に咲き、その生涯に一輪の花を咲き続けていきたいです」
口調が変わったことに対し、皆は違和感と同じくらいに女性らしさを感じた。
愛する者を語る時の女性の恥ずかしがる口調。
口ごもるような感じの言葉。
本人が心に決めた人なのだと、言わずとも解った。寂しく、空しくもなるが、愛した者の近くにあろうとすることはごく自然なこと。
それが神人族でも、一地域を治める者であっても変わらない。
異論は無かった。
辰ノ大花住民の誰もが駄目だと、否定の言葉を述べる者などいなかった。
気を遣われていないとは言い切れないが、口を出して来ないのだから堪えられる範囲内なのだ。
ならばそのままにしておいてほしい。
決めたことを容易くねじ曲げる程、奏鳴の心は柔ではない。
ぴんとした芯が通った、頑固とも言える程に強い。
「せめて最後に委伊達の者として、事態の解決に挑もう。何年もの間眠っていた竜が目を覚ます時だ」
奏鳴は手にした神具、竜神刀・政宗を顔の前に立てた。
顔の丁度中心。
峰を顔側、刃を外側に向け。
「なあ、竜神。私はお前が憎い。お前がいなければどれ程よかったことかと考えていたものだ。なのに、今はどうだろうな……」
語り掛ける。
竜神に。
聞こえても無視する竜神を他所に、奏鳴はそのまま続けて。
「お前がいることで強くなれそうな気がしている。だから力を貸せ。
今のお前では思う存分に力を
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