第一物語・後半-日来独立編-
第六十五章 強くあるために《1》
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つかり合い、互いの力を比べあっていた。
押しているのは麒麟。しかし竜神も長い間堪え続けている。
その存在の糧にあるものは流魔だ。
流魔は感情の変化により、その質を大きく変化させる。質が良ければ良い程力と直接結び付き、爆発的な力を生む。
思いの強い方が勝つ。
良くも悪くもそういうことだ。ゆえに弱い者は負ける。
辰ノ大花の上で今、奏鳴が動いた。
すっと左手を胸の前。右へと宙を撫でると、映画面|《モニター》が表示された。
通信中と表示された映画面は一瞬の間を置いて、辰ノ大花中の者達の前にも表示され、映画面からは奏鳴の声が聴こえた。
皆は驚くも慌てることなく、表示された映画面に耳を傾けた。
この辰ノ大花の地を治める一族の者が今、自分達に何かを伝えようとしているのだと感じ取ったためだ。
無言からの一言目。始めの一言で皆を自身へと完全に注目させた。
「お別れだ」
誰が聞いても、今の状況でその言葉は衝撃的だった。
なんの意味が込められたものなのか。思考という思考を働かせれば、理由など山程出てくる。
そのなかの一つ。たった一つの理由に辿り着けた者はいるだろうか。
奏鳴の心理を覗かなければ理解するのは困難だ。
誰かが息を飲み、また誰かが目を見開く。
それぞれ思うことはあるが、辰ノ大花を治める一族の唯一の生き残りが別れを告げた。
まず、思考など動かせる筈もなかった。
辰ノ大花に生きる者にとって、ましてやそうでなくともあまりにも衝撃であり、自身の耳を疑う程だ。
皆の言いたいことは分かっている。だからそれを踏まえて、奏鳴は口を動かした。
自分の考えを理解させるために。
「今まで迷惑を掛けてきた。本当にすまなかった。。家族を手に掛けた時から自分自身が怖くて、自信を持てないでいた。何時かまた同じようなことが起きてしまうのではないかと、皆にまで迷惑を掛けてしまうのではないかと思っていた」
奏鳴は語る。
今までの自身の気持ちを。苦しみ、生きてきたこれまでの日々を。
「黄森の者達を殺めてしまったこと。それが今回の事態を引き起こした。それ以来、私は死のうと考えていた。死んで亡くなればもう苦しまなくて済む、皆に迷惑を掛けることもない。そう思っていたから。
けど、皆は私を救おうとしてくれたな。突き放すような態度をずっと取っていたが、本当は嬉しかったんだ」
だから死ぬことが急に怖くなり、実之芽に泣き付いてしまった。改めて生きることの辛さを知るのと同時に、死ぬことへと恐怖も感じた。
あの時は自分がいなくなることが一番だと本気で思っていた。現実から逃げていただけなのだと、今となってはそう思う。
辛いことから逃げていたただの子ども。
受け止めることが出来ずに、皆の救いを無駄にしてし
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