暁 〜小説投稿サイト〜
神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第六十五章 強くあるために《1》
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
つかり合い、互いの力を比べあっていた。
 押しているのは麒麟。しかし竜神も長い間堪え続けている。
 その存在の糧にあるものは流魔だ。
 流魔は感情の変化により、その質を大きく変化させる。質が良ければ良い程力と直接結び付き、爆発的な力を生む。
 思いの強い方が勝つ。
 良くも悪くもそういうことだ。ゆえに弱い者は負ける。
 辰ノ大花の上で今、奏鳴が動いた。
 すっと左手を胸の前。右へと宙を撫でると、映画面|《モニター》が表示された。
 通信中と表示された映画面は一瞬の間を置いて、辰ノ大花中の者達の前にも表示され、映画面からは奏鳴の声が聴こえた。
 皆は驚くも慌てることなく、表示された映画面に耳を傾けた。
 この辰ノ大花の地を治める一族の者が今、自分達に何かを伝えようとしているのだと感じ取ったためだ。
 無言からの一言目。始めの一言で皆を自身へと完全に注目させた。

「お別れだ」

 誰が聞いても、今の状況でその言葉は衝撃的だった。
 なんの意味が込められたものなのか。思考という思考を働かせれば、理由など山程出てくる。
 そのなかの一つ。たった一つの理由に辿り着けた者はいるだろうか。
 奏鳴の心理を覗かなければ理解するのは困難だ。
 誰かが息を飲み、また誰かが目を見開く。
 それぞれ思うことはあるが、辰ノ大花を治める一族の唯一の生き残りが別れを告げた。
 まず、思考など動かせる筈もなかった。
 辰ノ大花に生きる者にとって、ましてやそうでなくともあまりにも衝撃であり、自身の耳を疑う程だ。
 皆の言いたいことは分かっている。だからそれを踏まえて、奏鳴は口を動かした。
 自分の考えを理解させるために。
「今まで迷惑を掛けてきた。本当にすまなかった。。家族を手に掛けた時から自分自身が怖くて、自信を持てないでいた。何時かまた同じようなことが起きてしまうのではないかと、皆にまで迷惑を掛けてしまうのではないかと思っていた」
 奏鳴は語る。
 今までの自身の気持ちを。苦しみ、生きてきたこれまでの日々を。
「黄森の者達を殺めてしまったこと。それが今回の事態を引き起こした。それ以来、私は死のうと考えていた。死んで亡くなればもう苦しまなくて済む、皆に迷惑を掛けることもない。そう思っていたから。
 けど、皆は私を救おうとしてくれたな。突き放すような態度をずっと取っていたが、本当は嬉しかったんだ」
 だから死ぬことが急に怖くなり、実之芽に泣き付いてしまった。改めて生きることの辛さを知るのと同時に、死ぬことへと恐怖も感じた。
 あの時は自分がいなくなることが一番だと本気で思っていた。現実から逃げていただけなのだと、今となってはそう思う。
 辛いことから逃げていたただの子ども。
 受け止めることが出来ずに、皆の救いを無駄にしてし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ