第一物語・後半-日来独立編-
第六十五章 強くあるために《1》
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
どちらを選ぶか。
何も変わらず弱いままか、愚かであっても強くなるか。
二択であっても、奏鳴にとってはそれは一択でしかなかった。
答えは決まっている。
「やるぞ、竜神」
政宗を握り、意思の強さを表した。
強くあるために力を得た。だが力は得ただけでは意味が無い。
力は扱えてこそ強さとなる。
ならば扱ってみせる。もう暴走などせず、竜神の力を最大限まで扱ってみせてやると意思が強くなり始める。
「やってこい。ここで俺は見てるからよ。心配ねえさ、お前の後ろには俺が立ってんだからよ」
セーランは数歩下がり、同時に憂いの葬爪を解いた。
青い腕が塵となり、風に吹かれたように流れて消える。儚い光を放って。
見届け、奏鳴は短く頷く。行ってくると、そう意味の込められたものだ。
セーランも頷き、同じように返す。行ってこいと言っているかのように感じられた。
だから奏鳴は振り返る。
目の前。竜神や麒麟の向こうに立つ央信と決着を付けるために。
●
振り返る奏鳴を見るや央信の眉が何かを感じ取ったのか、ぴくりと微かに反応を示した。
何かしらの変化を感じ取り、それがなんなのかは分からないままだが。分かることが一つだけ。
それは。
「負ける気など微塵も無いか。鋭いその目がそれを表している」
先程までただ突っ立ていただけだった。諦めたのかと思ったらそうではなかった。
きっと日来の長がなんらかの小細工をし、改めさせたのだろう。過去の出来事と向き合わせ、新たな思いで生きるように。
悪役ならば買って出てやる。それで守るべきものが守れるならば。
例え身を傷付け、滅びようとも後悔は無い。
自身の決意を貫いたのだ。
恥じることなどない。
央信は決して自身が正しいとは思ってはいない。今やるべきことを判断しているだけで、善か悪など関係無かった。
格好付けて務まるほど、地域を治めることは甘くない。
時には何かを犠牲にしてでも、やり遂げなければならないことがある。だが彼女の根本的行動理由は全て妹によるものだった。
「待っていろ。姉さんは必ず勝って戻ってくるからな」
語った相手は首に掛けた銀色の首飾り。安価なものだが央信にとっては大切なお守りだ。
鈍く光沢を放つそれは、何処か不思議なものに感じられた。
誰かを想って贈られたものなのだから、神秘的に目が捕らえたのかもしれない。
双槍を握り締め、首を取りに行く。
ここで負けようものなら、自身の命と黄森の今後が大きく揺れ動く。
なんとしても阻止しなければ。そして――勝つのだ。
●
風が荒れた。
それはいずれ来る終わりを予言するかのような風で、相対する二人の長を撫でた。
二人の長の間には竜神と天魔に侵食された麒麟がぶ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ