明けに咲く牡丹の花
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手にイノシシはしたくないのは確かな事だけど、それでもしなければ後々もっと厄介な事になる。
劉備軍の強化は袁術軍の被害に繋がる。兵を減らされれば減らされる程に飼い猫の首輪は緩まっていく。事前の予定では二回ないし三回目で孫策軍を引っ張り出す計算だからそれまでに被害をより大きくされると危うい賭けになるだろう。
末っ子の身柄を人質としていられる内はいいが、被害が増える事で目付け役の紀霊まで駆り出される事になると拙い。孫呉のじゃじゃ馬姫様は単体でも手を焼くし、紀霊ぐらいしか褐色猫狂いやふんどし鈴女に気付ける者がいないのも問題だ。それも含めて夕が先に指示しているかもしれないが現場からの距離が離れすぎていて少し不安が残る。
「ね、ねぇ、ちょこちゃん。さすがにそれは無しにしようよ」
先の思考に潜りすぎていたあたしに斗詩が懇願してきた。
――まあ、今は先の事はいっか。とりあえず公孫賛達を捕えないとあたしや夕の立場も悪くなるし。
「ダメダメ。逃げられたらあたし達が詰られるんだから。後ろから猪々子も来るだろうし問題ないよね。ほら、行くよ! 張コウ隊! 盾を前に全速力で駆け抜けろっ! 公孫賛を逃がすな!」
「もう行くの!? 待ってよ! 顔良隊! 張コウ隊に続けぇ!」
この策の狙いはある程度見抜いていた。
最初に矢を放つのは将を狙ってだ。突撃への牽制では無く、指揮官を封じる事で軍の脚を乱し、先導するモノを無くす事で脚を止めさせる。
見事な戦術だと思う。公孫賛の白馬義従の騎射の腕は高いし、それが馬の上で無いのなら尚更。横合いを抜ける時も何度か危ない所があった。
異常な敵兵からのこの策によってあたし達の兵の心理はかき乱されている為に、このまま続けるだけでは無駄な被害と時間を浪費して悠々と逃げられるだけ。こいつらは白馬義従の兵だろうから馬を歩兵に渡して逃走の速度も上げてきたはず。
敵は逃げ切る時間が欲しい。あたし達は公孫賛を捕まえたい。ならどうすればいいか。
被害を気にせず突っ込めばいい。まず公孫賛の本隊の足を止めなければ話にならないのだから。
敵が一番警戒しているのは趙雲と拮抗していたあたしで間違いない。なら、あたしが先行して囮になれば斗詩は矢の被害を抑えて殲滅に集中出来るだろう。
それに……公孫賛の軍は少しばかり舐めすぎだ。
「あたしの部下を舐めすぎってね。夕を助ける為が一番なのにあたしが普通の事しかしてないわけないじゃん」
次々と矢が放たれる中、盾をそのままに最前列を駆ける張コウ隊は突きだされる槍も気にせずに敵に突撃していく。
二列目、味方の背を踏み越えて打ち倒す様は味方を気にしない敵兵達と同じモノ。
強靭な精神力に支えられた張コウ隊の精兵は死の気配に臆することなく向かっていく。受け止めても
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