第9話 「君はフェイト」
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はないか。
そんなことを考えているうちに俺は、「このまま現実から目を背けて考えることさえ放棄すれば、ただ生きているだけの人間。人形だって言われてもおかしくない人間になる」といった必要のないことまで言ってしまっていた。
すぐに誤魔化そうとしたが、ふと視線をテスタロッサからモニターに移したことがきっかけで、どうにか話の繋ぎ方を導き出すことができた。
「……それに自分が誰なのか決めるのは自分だけど、他人が自分を誰か決めてくれるときもある。君には、君をフェイト・テスタロッサだって認めてくれている人達がいるはずだよ」
テスタロッサの視線が俺からモニターの方に移る。そこには高町にユーノ、ちょうど合流したアルフの姿があった。
テスタロッサの視線はアルフに向いたかと思うと、高町の方に移る。瞳に少しだが、力が戻ったように感じる。
「……あの子……名前なんだっけ?」
思わず返答しそうになったが、彼女にとって高町と会話するのは放心状態から抜け出すきっかけになるのではないかと思った。
俺は言いかかっていた口を一旦閉じてから、彼女に返事を返した。
「それは自分で聞いてほうがいい」
「……せっかく教えてくれたのに……それに私、あの子にひどいことを……」
小声で呟くテスタロッサの顔は徐々に曇っていく。高町は教えたというよりは、一方的に名乗っていた気もするが、今はどうでもいいことだ。
さて、今の彼女にはどんなことを言えばいいのだろうか。
先ほどプレシアにあんなことを言われたのだから、混乱で名前をよく思い出せなくてもおかしくない。こんなことは、また彼女を放心状態にしかねないので言えるはずもない。
「……確かに君達は何度もぶつかりあった。でも、あの子は君が無視しようと何度だって話しかけてきただろ?」
「……うん。それに何度も……私の名前を呼んでくれた」
「だったら心配することはないんじゃないか? 俺はあの子のことを多少知ってる。君が話せる状態なら、君から話しかけなくてもあっちから話しかけてくると思うよ」
言い終わるのと同じくらいから、少しずつテスタロッサの瞳に力が戻り始めた。それに伴って涙もあふれ始める。
泣いている姿を見るのも悪いので顔を逸らすと、ふと近くに置かれていた彼女のデバイスに視線が行った。彼女の心境の変化を察したのか発光している。
……ここからどういう選択をするかは彼女次第だな。俺がいると行動しづらいかもしれないから一旦外に出るか。
「……あの」
「……君は、君の好きなようにすればいい。ただ最後にひとつだけ言っておくよ……親とは、話せるうちに話したほうがいい」
テスタロッサの返事は待たずに部屋から出た。近くの壁に寄りかかって大きく息を吐くと、ファラが胸ポケットから顔を出
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