第9話 「君はフェイト」
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慰めたりしたことなんてない。
ああだこうだ考えているうちに、完全に考えはまとまっていなかったのだが、俺は無意識に自分の中に出した考えを呟いていた。
「……君は、アリシア・テスタロッサになれなかった失敗作なんかじゃない」
「…………」
アリシアや失敗作という言葉に反応したのか、テスタロッサの瞳がこちらに向いた。だが、彼女の中では負の感情が渦巻いたままのようで返事はない。
思わず口にしてしまったが、反応があった以上やめるわけにもいかない。
考えろ……返事がないのは別に構わない。今言っているのは、俺の個人的な意見だ。彼女からの返事がなかろうと関係はない。あったなら、例えそれが八つ当たりであろうと感情を表に出しているという面ではプラスになる。
「……君の見た目がどんなにアリシアに似ていようとも、君はアリシアとは別人だよ」
「…………それは……失敗作ってことだよね?」
虚ろな瞳のまま、力のない声で返事を返してきた。返事があったことに多少驚いたが、自分を人ではなくものとして考えているような言葉のほうが気になった。
自分のことを失敗作だと言う気持ちは、いったいどんなものだろうか。もし自分が彼女の立場だったら……、と考えたがそこで強引に断ち切った。
俺はこの子じゃない。自分が彼女だったなら、などという仮定を考えても、現状から目を背けているだけだ。言葉をかける以上は彼女の心境を考えることも必要だろうが、必要以上に考えるのは不要。
必要以上のことを考えないようにしながら、自分なりの考えをまとめていく。あまり無言が続くと、彼女がまた殻に篭ってしまうかもしれなかったため、まとまったところから話すことにした。
「……君はものじゃなくて人間だ。そして、この世に同じ人間はいない。だから……君はアリシアの失敗作なんかじゃない」
「…………でも……私は……」
「作られた命だろうと、人間は人間だよ。君には……自分の意思だって、フェイトっていう名前だってあるだろ?」
プレシアの言動は、ある意味では矛盾している気がする。
テスタロッサの見た目はアリシアに似ているが、性格や仕草は違う。だからプレシアはアリシアだと認識できず、アリシアでない人間がアリシアの見た目をしているから憎悪を抱く。それが理由でテスタロッサを娘だと認めないのではないか。
だがその一方で、心のどこかでは娘だと思おうとしているのではないだろうか。
本当に何も思っていないのなら、フェイトという名前はつける必要はない。何かしらの理由で必要だったとしても、アリシアの失敗作だと本気で思っているのなら名前なんて呼ぶことはないだろう。
プレシアは……心の奥底――自分では気がつかないほどの深層心理では、テスタロッサをアリシアと区別して考えようとしていたので
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