暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
妖精のロンド
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色のシャツ、カットジーンズというラフな出で立ちだ。

「ツバキねーちゃん」

「久しぶりね、蓮君。リアルじゃ初めまして、村雨椿って言います」

【風魔忍軍】副長、ツバキはそう言って微笑んだ。

彼女はSAO時代から、《六王》の頭脳(ブレイン)と言われていた《老僧の千手》シゲクニの第一補佐官である。一級ギルド内でも、特に有能な補佐官として有名だった。

「あれ?そういやシゲさんさっきから見ないけど、どしたの?」

そう問うと、村雨と名乗った女性は少し困ったように手をおとがいに添えた。

「それが、リアルで連絡が取れないんです。仮想課の方々に聞いても、プライバシーに関する事なのでって言われるだけで………」

「ふぅーん、そういったことってSAO帰還者(ぼくたち)には公開されるはずんんだけどなぁ。どーしたんだろ」

そんな会話をしていると、蓮の肩が叩かれた。

振り向くと、そこにいたのは痛んだ金髪の長身の男。

「やっ、れ〜んくん」

「ウィルにーちゃんか」

ずずっ、と烏龍茶の入ったグラスを傾ける。

「主役がこんなトコで燻ってたらダメッスよ〜。みぃんな乾杯の音頭待ってたんスから」

「へ?そーなの」

「そーッスそーッス。ささ、こっちこっち」

言われるがままに車椅子を押され、ちょっとしたステージのような所に連れて行かれる。

「ほらほら、なんか喋って」

「はぁ!?そ、そんなこと急に言われても………」

どもるが、周囲のプレッシャーとは末恐ろしい。

何か喋ろという無言の圧力が、物理的な力となって降りかかってくる。

───うぅ、帰りたい………。

そう胸中で思うが、無論それで帰られるはずもない。

代わりに蓮は、静かに部屋に集まる人々の顔を見渡した。

この二年間。あのデスゲームの中で、小日向蓮という一個人に関わった人々の顔を。

《鬼才》小日向相馬ではなく、小日向蓮と関わった人達の顔を。

イヨが気を利かせたのか、BGMはいつの間にか穏やかなバラードに変わっていた。人々は皆、湖の水面のように静まり返っている。

そこに蓮は───小日向蓮は、波紋を生み出すように語り始めた。

「…………あの世界に閉じ込められた時、僕は皆みたいに、絶対にこの世界に戻りたいとは思えなかった」

────それは────

「だって僕は、ずっと嫌ってた。小日向蓮じゃなくて、小日向相馬の弟っていうレッテルを押し付けてくるこの世界を」

────あの世界を《殺した》────

「だけど、こうして戻ってみて分かったんだ。僕にも、待ってくれてた人がいるって。僕を、小日向蓮のことを信じてくれている人がいるって」

視界の端で、木綿季がそっと手の甲を目尻に
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