第64話 ヘキサの「おねがい」
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咲がスクールのレッスンを終えて片づけをしていると、後ろからヘキサが声をかけてきた。
「ひさびさに野外劇場に行かない?」
現在、リトルスターマインは他のスクール生より早いコマでレッスンを受けている。講師がクレームをつける保護者へ示した妥協案だ。リトルスターマインだけ他の生徒とはちがう時間帯で練習させると。なので少し前まではステージに当てていた時間で、咲たちはダンスのレッスンを受けている。
「いいよ。どーせ早く帰ってもお説教されるだけだし」
「ありがとう」
咲はランドセルとユニフォーム袋を担ぎ、教室を出て行くヘキサに続いた。
何週間かぶりに訪れた野外劇場は、無人であること以外は、最後に踊った日から何も変わっていなかった。
咲とヘキサは客席のベンチの一つに並んで座った。
「咲、おねがいがあるの」
ヘキサは世間話もおしゃべりもなく告げた。
「どんなこと?」
「咲が持ってる戦極ドライバーを、ユグドラシル・コーポレーションに返してほしいの」
咲は言葉を失った。ショックだったわけでも、傷ついたわけでもない。ただ、驚いた。ユグドラシル・コーポレーションはもっと強硬なやり方で咲からベルトを取り上げるものと思い込んでいた。それがこんな平和的な相手と手段で来るとは。
「だめ?」
「えーと……」
咲はランドセルから戦極ドライバーを取り出し、膝の上に置いた。
これを手に入れてから様々なことがあった。これを捨てたいと思った時もあった。――けれど。
「ヘキサ。これ買う時、みんなでお金出したの、覚えてる?」
「わすれるわけないわ」
「これがあたしだけのお金か、ヘキサだけのお金で買った物なら、あたし、返せた。でもこれはちがう。あたしのもので、ヘキサのものだけど、それ以上にリトルスターマインみんなのもの。だからこれをユグドラシルに返す時は、みんなが全員いいよって言った時だけ」
このベルトはチームのために買った、チームの所有物だ。
一番初めの前提を、咲は忘れていなかった。
「――わたしが返してって『おねがい』しても、だめなのね」
ヘキサは寂しげに笑んだ。
「それはみんな次第だけど。――とりあえず今はだめ。みんなの意見を聞かない内は、あたし、これ、ヘキサのお兄さんにだって渡すつもりないから」
ヘキサの長兄は恐ろしい実力の持ち主だと、分かった上で口にした。
「……とまあ、これがあたしの意見だけど。ベルト返さないとヘキサはこまるのよね?」
「うん。今は貴兄さんも光兄さんも不安定だから。わたしはちゃんと一人でもできるよ、って伝えて安心させてあげたい」
咲はベンチを立ち上がった。
「じゃあや
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