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少年少女の戦極時代
第63話 碧沙と凌馬 A
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「わたしが、咲からですか」
「ああ。私たちだって無闇に争いたくはない。友人のキミが説得したほうが平和的な解決が見込まれるからね。だからもう一人、葛葉紘汰君のドライバー回収はキミの下のお兄さんにお願いしてあるんだ。彼は了承したよ」

 やはり。心の中で碧沙は思った。貴虎が何かを光実に明かしてから、光実はユグドラシル側だという気がしていた。

「わたしなんかが……そんなことできるんでしょうか」
「それについては心配要らない」

 凌馬はある物を碧沙の前に置いた。それは咲たちが使っていた戦極ドライバーと寸分違わぬ物だった。

「これ……」
「量産型だからキミでも使える。錠前はお兄さんのお下がりだけど」

 碧沙は量産型ドライバーとメロンの錠前を持ち上げた。重い。大きい。咲や兄たちは今日までこんな物を負って戦ってきたのかと思うと、泣きたい気持ちになった。

「キミに貸してあげよう。室井咲君がドライバーの引き渡しを渋るならこれを使ってくれ」
「それはわたしに、咲と戦えとおっしゃってるんですか?」
「そう聞こえたならそうなんだろうね」

 咲から戦極ドライバーを奪う。
 咲から、力を奪う。
 力がなくなった咲はインベスともアーマードライダーとも戦えなくなる。
 どこかで一度は望んだことだった。戦いのない日常で、ごっこ遊びのビートライダーズに戻って、また踊り始める――

 碧沙は大きく息を吸い、吐いた。

「申し訳ありませんけど、こちらはお返しします」

 碧沙は量産型ドライバーとメロンロックシードを凌馬に差し返した。

「――何故だい? キミは兄さんの力になりたいんだろう。それさえあればキミは貴虎たちと同じ所に並び立てるんだよ?」
「それでも、きっとこれはわたしが着けちゃいけない物ですから」
「確かに貴虎は家族を大切にする男だから、キミがこれを使ったら心配するだろうが」
「それもありますけど、もっと根本的なことなんです」

 碧沙は凌馬をまっすぐ見上げた。

「大事な人がキズつくよりは、自分がキズついたほうがいい。わたしが知ってる貴虎兄さんは、そういう人です。何でか呉島の男の人ってそうなんです。貴兄さんも、光兄さんも」

 本当にしょうがない、と。呉島碧沙は輝かんばかりの笑顔を浮かべた。だってそんなところさえ、碧沙には愛しくてならない兄たちなのだ。

「いちばん最初にベルトの被験者になったのも、一人で戦ってたのも、だからだと思います。これにたよったら、貴兄さんが守ろうとしてくれたもの、全部ふみにじっちゃいます。だからこれは頂けません。ごめんなさい」

 碧沙はぺこりと凌馬に向けて頭を下げた。

「……そうか。ではキミはどうやって室井咲から戦極ドライバーを回収してくるのかな?」

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