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少年少女の戦極時代
第62話 碧沙と凌馬 @

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 光実が家を出てから程なく、呉島邸の前に一台の車が横付けされた。
 まだ屋敷の中に入ってなかった碧沙の前で、その車の運転手が降りた。碧沙にとってはよく見る、黒スーツに黒サングラス姿。

「呉島碧沙さんですか」
「は、はい」
「ユグドラシル・コーポレーション研究開発部門の者です。プロフェッサー凌馬よりあなたを迎えに上がるよう指示を受けています」
「――このこと、兄たちは知っているんですか」
「いえ。呉島主任は別の仕事で動いておいでです」

 碧沙は予感した。今日光実が深刻な顔で出かけて行ったことも、貴虎の「別の仕事」ときっと無関係ではない。今の自分のように、長兄から何らかの働きかけがあったのだ。

「そうですか――分かりました。したくしてきますので、少し待ってください」

 碧沙は屋敷へ取って返した。
 自室へ小走りに戻り、部屋着(それでも外に着て出られる上等な物)から小学校の制服に着替えた。未成年のオフィシャルは制服、といつか貴虎が言っていたからだ。


 碧沙は再び屋敷を出た。待っていた運転手が車の後部座席を開ける。碧沙はそのまま乗り込み、シートベルトを締めた。

(このタイミングでユグドラシル側からわたしにコンタクトしてくるなんて、ヘルヘイム関係しかありえない。何か兄さんたちの力になれるかもしれない)

 運転中、碧沙は無駄口を利かなかった。緊張していたから、というのもある。


 ユグドラシル・タワーに着くと、碧沙はすぐさま連れられてエレベーターに乗り、何階かも分からない上層フロアまで連れて行かれた。

 そこはコの字にテーブルとイスが配置された会議室で、正面窓際の席に一人の白衣の男が座っていた。

「プロフェッサー凌馬。呉島主任の妹さんをお連れしました」

 白衣の男はタブレットの画面から顔を上げた。

「――ようこそ。貴虎の妹君」
「兄をご存じなんですか?」
「君の上の兄さんとは同じ研究部署でね。私は開発担当で戦極凌馬という。よろしく」
「あ…呉島碧沙、です。兄がおせわになってます」

 凌馬から近くに座るよう言われ、とりあえずイス一脚を間にして座ると、「隣に」と言われた。碧沙は凌馬の至近距離のイスに座り直した。凌馬は満足げな笑みを浮かべた。

「さて。今日キミを呼び立てたのは他でもない。キミの兄さんの手伝いをしてほしいからだ」
「わたしが、兄の力になれることがあるんですか?」
「あるとも。むしろこの任務はキミにしかできない」
「教えてください。それで兄さんの力になれるならっ」

 凌馬は我が意を得たりというふうに笑んだ。

「キミの友人、室井咲君のドライバーを回収してほしいんだ」
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