暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三話 戦時から平時へ
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
績が悪化するはずです」
「なるほど」
ホアンが頷いた、苦虫を潰したような顔をしている。

「軍の予算も削減され動員も解除されるとなれば……」
「戦争が無ければ物資の消費も減少する、補充は微々たるものになるだろう。なるほど、軍に物を収める事で儲けている企業はあっという間に経営が傾くだろうな」

トリューニヒトがウンザリした様な口調でヴァレンシュタインの危惧を肯定した。軍は巨大組織だ、そこに関わっている企業は膨大な数になるだろう。造船、武器、エネルギー、食糧、衣服……。それが縮小される、活動が停滞するとなれば重大な影響が出るのは間違いない。

「それを避けるためには軍需から民需への切り替え、事業の多角化、それとリストラか……」
「ホアン、リストラはともかく切り替えと多角化は簡単にはいかんだろう。失業者の増大と業績の悪化か、……とんでもない不況になりかねんな」
嫌な予感が当たった、頭の痛い問題だ。皆が苦い表情をしている、ヴァレンシュタインもだ。

「和平を結んだが故に不況になったとなれば、戦争を望む声が上がりかねん。確かにヴァレンシュタイン中将の言う通りだ、和平が吹き飛びかねない」
トリューニヒトの言葉に皆が頷いた。
「和平の事を真剣に考えている人間など我々以外には居ません。当然ですが和平後の事を考えている人間も居ない。私達が考えるしかないんです」
そうだな、ヴァレンシュタイン。お前さんの言う通りだ。

「政府主導で雇用対策、景気昂揚対策を実施しなければならんだろう、公共事業による大規模な経済発展計画か。資源開発、地域開発、惑星開発か……、しかし財源が……」
財源が無い、今でさえ一杯一杯だ。私の言葉にホアンもトリューニヒトも顔を顰めた。この二人も同盟の財政状態は良く分かっている。だから和平を選択した。

「軍事費は多少削減できるはずです。それと動員の解除は徐々に行うべきでしょう、大規模にやると混乱する可能性が高い、少しずつ吐き出すしかありません」
「……」
「財源は無視して先ずは計画を立ててください」
不思議な事を言う、また三人で顔を見合わせた。

「財源が無ければ意味の無い計画になりかねんが……」
「レベロ委員長、財源については私も多少思う所が有ります。とりあえず計画をお願いします」
思う所? フェザーンを利用するつもりか? まあこの男が言うのであれば何か成算が有るのだろうが……。

「……やってみるか」
私が言うとトリューニヒト、ホアンが“そうだな”、“やってみるか”と声を出した。
「地域社会開発、天然資源、経済開発とかちあうな。出来れば協力体制を取りたいが……」
「無理だよ、トリューニヒト。ラウド、マクワイヤー、トレルは頼りにはならん。こちらで主導権を取って財政委員会主導、或いは議長主導で行う
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ