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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三話 戦時から平時へ
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人類史上最大の変化かもしれないと私は考えている。それだけに混乱は大きい」
「どちらかと言えば帝国の方が混乱は大きいのではありませんか?」
バグダッシュ准将が問い掛けて来た。生真面目な表情をしている。帝国の情報収集というわけでは無さそうだ。
「確かに帝国の方が混乱は大きい、厳しい状況に有る。しかし帝国は敗北続きで変化を受け入れなければどうにもならないところにまで来ている。そして帝国の指導者達、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は変化を受け入れる覚悟をしている。混乱はあるだろうが耐えられるだろう。帝国の再生は可能だと私は考えている」
「……」
私の言葉に准将は黙り込んだ。
「勝利続きの同盟の方が変化を受け入れ辛かろうな。特に同盟市民に主権が有るというのが厄介だ」
「確かに……、政府は市民感情を無視出来ません」
「そうだ、……敗北した国家が敗北を糧に力強く羽ばたく事は珍しくない。勝利者こそ勝った後の事が難しい。歴史がそれを示している」
バグダッシュ准将が大きく息を吐いた。
「同盟市民にどうやって変化を受け入れさせるかという事ですな。……ヴァレンシュタイン中将はその辺りをどう考えているのか……」
「さて、気付いていないとも思えんが変化を受け入れさせるには余程の荒療治が必要だろう。その時こそ同盟は大きく混乱するのではないかと私は考えている。……帝国はヴァレンシュタイン中将に感謝すべきかもしれんな。徹底的に負けたからこそ生まれ変わる事を選ばざるを得なくなった……」
同盟は帝国とは違う。帝国は皇帝主権でありトップダウンで物事を進められる。しかし同盟は市民に主権が有る。百億以上の人間が主権者なのだ、この主権者をどうやって納得させるのか……。
「まだまだ一波乱、二波乱有る、閣下はそうお考えなのですな」
「そうだ、それに地球教、フェザーンがこのまま大人しくしているとも思えん」
「なるほど、前途多難ですな」
前途多難か……、陳腐な台詞ではあるが確かにその通りだ。百五十年続いた戦争を終結し和平を結ぶ。容易なことではあるまい。しかし今を逃せば戦争は更に続くだろう。大きな滝に落ちないように懸命に川を遡ろうとしている、そんな思いがした……。
宇宙歴 795年 11月 5日 ハイネセン 財政委員会 ジョアン・レベロ
「良いのかね、こんなところに居て。出兵の準備で忙しいのではないかな?」
「部下達に任せておいても大丈夫ですよ。皆、慣れていますからね」
「いや、シトレ元帥が君を必要としているんじゃないかと思うんだが」
ホアンの言葉にヴァレンシュタインが肩を竦めた。
「大まかな作戦案はシトレ元帥と打ち合わせをしています。しかし、皆の前で話せる事ではありませんからね、最終的には出兵後に細部
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