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少年少女の戦極時代
第61話 味方がいる
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 取り返しがつかない道に踏み込もうとしている予感はあった。


 ――“葛葉紘汰の持つ戦極ドライバーを奪還しろ”――


 保身を優先した作戦内容は我ながら悪質だ。仮に事が露呈せず「ミッチ」を続けられるとしても、その裏で呉島光実は確実に大事なものを損ねるだろう。

(それでもやるしかない。やるしかないんだ)

 機材とドライバーを詰めたショルダーバッグを持って、光実は屋敷を出た。
 今日使う場所までは湊の車で送ってもらう手筈になっている。彼女はすでに玄関に車を横付けして光実を待っていた。

「兄さん」

 はっとし、ふり返る。いつからいたのか、後ろに碧沙が立っていた。

「今日は学校行かないの?」
「うん。ちょっとね。やることがあるんだ」
「そう」

 呟いたきり、碧沙は俯いた。今の光実には碧沙に構うだけの余裕はない。話が続かないならばと光実は車に乗り込もうとした。それを引き留めるかのように。

「あのね、兄さん。たとえば兄さんがどんなヒドイことしても、わたしは兄さんの味方だから」

 まるで光実が今からしようとしていることを知っているような言い方。光実の心臓がいやな律で鳴り始める。

「いきなりどうしたの」
「なんとなく、今言わなくちゃいけない気がしたの」

 碧沙は光実の手を取ると、彼女自身の頬に当てがった。

「わすれないでね。光兄さんには、貴兄さんもわたしもいるから。いつだって、ひとりでかかえこまないでいいからね」

 仲間でしょ、俺たち――いつかラットが紘汰に告げた言葉がリフレインする。

 仲間になら打ち明けられるのか。この胸の内を。兄にも仲間にも好かれたままでいたいという、この貪欲さを。
 打ち明けられるわけがなかった。それを分かってくれたのは、この妹だけだった。

 光実は碧沙の細い体を抱き寄せ、目一杯、抱き締めた。

「紘汰さんと舞さんに嫌われたくない」
「うん」
「兄さんから見放されたくない」
「うん」
「ひとりぼっちに、なりたくない――っ」
「――だいじょうぶ」

 碧沙が光実の頭をやわらかく撫でた。

「光兄さんがどっちを取っても、わたしは味方するわ。はなれたって、わたしが兄さんを想ってること、わすれないで。これで光兄さんは、ひとりぼっちじゃないよ」
「碧沙……っ」

 かつてこれほどまで人生で「呉島光実」を肯定されたことがあっただろうか。抱きついた碧沙が背中を一定のリズムで撫でる感触が心地いい。

 いっそこのまま碧沙を連れて部屋に引き篭もれたら。光実に優しい言葉だけを紡ぐ妹と二人だけで世界が閉ざせたら。

 ――だがそんなことを許すほど現実は甘くない。
 光実は、心地よいばかりの妹の抱擁から離れ、碧沙の目をしっかり見
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