暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
聖者の右腕篇
05.真祖の覚醒
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しめた。
 改めて意識して抱きしめた少女は、か細く普通の小さな少女にしか感じられない。
 人工生命体(ホムンクルス)の少女の身体はとても柔らく甘い香りが鼻腔をくすぐる。
 すると喉の渇きと犬歯の疼きを覚える。吸血衝動の高まる。
 ほっそりとした人工生命体(ホムンクルス)の少女のむき出しの首筋に牙を突き立てた。そして彼女の体液を吸い上げる。
 長い長い沈黙の後、彩斗はそっと唇を離した。

「緒河先輩……いったい、なにをやってるんですか?」

 冷たい口調で雪菜は訊いてくる。
 その言葉に若干の悪寒を感じる。

「あ、ああ、この子の眷獣を俺の支配下に置こうと思って。ほら、魔力の仕送りというか、なんつうか……この子の眷獣が宿主の命じゃなくて、俺の命を喰えばこの子の寿命も延びるだろ?」

「つまり彼女を救うために、血を吸った、ということですか」

 雪菜の言葉には冷たい軽蔑がこもっている。なぜ雪菜がそのようになっているのかわからず、古城を見るが古城は何か哀れむように見ている。

「そうですか。それで気絶している女の子を抱きしめて興奮していたわけですね」

「い、いや。別にそういうわけじゃ……ってしかたねぇだろ!」

 彩斗の言葉は雪菜と古城には届かなかった。

「緒河先輩が何者なのか聞こうと思いましたがその必要ないようですね」

 雪菜は冷たい言葉を彩斗に浴びせる。

「ロリコン……だったんですね」

「ご、誤解だっつうの──!」

 絃神島の最深部。海面下二百二十メートルの最下層に、少年の悲痛な叫びが響いたのだった。




 暁古城と緒河彩斗は、学生食堂の端っこの、日当たりのいいテラス席で突っ伏した。
 宿題漬けの週末を乗り越えた月曜日の放課後。

「熱い……焼ける。灰になる……つか、追々試ってなんだ。あのチビッ子担任、絶対に俺たちをいたぶって遊んでやがんだろ!」

「全くだ……誰が島の危機を救ったと思ってんだよ」

 夏休みに受けた追試は、積もりに積もった出席日数不足の埋め合わせの点数に及ばず、おまけに夏休み明け初日の授業をサボったことで、結果的に追々試である。これが絃神島を沈没から救った代償だと思うと、あまりに理不尽だ。

 唯一の救いは、あの事件以来、妙に浅葱が優しい。
 今日もわざわざ放課後居残って、勉強を教えてくれるというのだから。
 なんでも浅葱もあの事件に巻き込まれていたらしく彼女は古城が絃神島を救ったということも知っている。
 浅葱は現在、飲み物を買うために購買部の方へと出かけて行った。
 あたしが戻ってくる前にやっておけ、と彼女に言われた問題集から、古城と彩斗は目を逸らす。

「なぁ、古城」

「なんだ、ロリコン」

「誰がロリコ
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