暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
聖者の右腕篇
05.真祖の覚醒
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一本の柱が杭のように貫いている。
 それが絃神島を連結させる黒曜石に似た半透明の石柱──要石(キーストーン)である。

「お……おお……」

 オイスタッハの口から、悲漢と歓喜の声が同時に漏れる。

「ロタリンギアの聖堂より簒奪されし不朽体……我ら信徒の手に取り戻す日を待ちわびたぞ! アスタルテ! もはや我らの行く手を阻むものはなし。あの忌まわしき楔を引き抜き、退廃の島に裁きを下しなさい!」

 高らかな笑い声を上げながら、オイスタッハが従者たる人工生命体(アスタルテ)に命じる。
 しかしアスタルテは動かない。実体化した眷獣の鎧に包まれたまま、無表情に告げる。

命令認識(リシーブド)。ただし前提条件に誤謬があります。ゆえに命令の再選択を要求します」

「なに?」

 巨大な戦斧を握りしめて、オイスタッハが要石によって固定されたアンカーの上に、誰かいるのを確認する。

 制服を着た少年。

「悪いな、オッサン。お前の思い通りにはさせねぇぜ」

 無気力な吸血鬼──緒河彩斗は、オイスタッハを睨みつける。




「西欧教会の“神”に仕えた聖人の遺体……」

 キーストーンと呼ばれた石柱を、彩斗は眺める。
 半透明の石の中には、誰かの"腕"が浮かんでる。ミイラのように干からびた、細い腕だ。
 それは自らの信仰のために苦難を受け、命を失った殉教者の遺体だ。

「聖遺物。こいつがあんたの目的だったわけか」

 彩斗は聖遺物を眺めながら言う。

「貴方たちが絃神島と呼ぶこの都市が設計されたのは、今か……」

「んなことは、どうでもいいんだよ!」

 オイスタッハが語り出そうとしたのを彩斗は遮る。

「オッサンにとってこの聖遺物がなんなのかはわかんねぇが、何か特別な何かってことはわかる」

 怒りに震える彩斗は右手を握りしめ、続ける。

「それでも、この島の人間を……俺の親友を傷つけていい理由にはなんねぇだろ!」

 殺意に満ちたその眼光にオイスタッハは一瞬、身体を震わす。その殺意に満ちた眼光にではない。彩斗から溢れ出る魔力にだ。

「やはり貴方という存在だけがわかりませんね」

 オイスタッハは、戦斧を構えながら彩斗という存在を確認する。

「俺は、ただの第四真祖(あいつ)の親友だ。それ以上のなんでもねぇよ」

 その言葉を聞いたオイスタッハは、ふん、と荒々しく息を吐く。

「もはや言葉は無益のようです。これより我らが聖遺物を奪還する。邪魔立てするというならば実力をもって排除するまで──アスタルテ!」

命令受諾(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、“薔薇の指先(ロドダクテュロス)”──」

 沈黙していたアスタ
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