暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
聖者の右腕篇
05.真祖の覚醒
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っているんだこいつは、と思ってしまう。けれど、今の雪菜を言葉で説得するのは、きっと古城には難しい。

 背中を丸めている雪菜の姿はあまりに儚げで、このまま目を離すと消えてしまいそうに感じられた。
 そのことに苛立ってしまう。

「あのな、ひ……」

「姫柊……!」

 古城の言葉は隣の少年の怒声に掻き消された。
 雪菜はビクッと体を震わせて恐る恐るこちらへと向く。少し怯える彼女へとゆっくりと歩み寄る彩斗。

「お前は自分のことをもっとよく考えろ」

 そう言いつつ雪菜の額を小突きながらいつもの無気力な表情が微笑む。

「緒河先輩……?」

 座り込んだままの雪菜は彩斗を見上げる。彩斗は大きく伸びをしたのちに、こちらへと顔を向ける。

「古城……姫柊を、島のみんなを救いたいならお前の持つ真祖の力を使え……」

 その言葉に古城は驚きを隠せない。なんでお前が、と言おうとしたが驚愕のあまり言葉が出ない。
 そんな古城に彩斗は言葉を続ける。

「そのためにやんなきゃいけないことぐらいお前にもわかんだろ」

 そう言いながら彩斗は徐々にその足を動かし、奥地へと向かっていく。

「それまでの時間は、俺が繋いどくからよ」

 そう言い残し、彩斗は奥地の闇へと消えて行った。




 その場所は、光すら届かぬ海中深くに造られた、永遠の牢獄のようにも思えた。
 キーストンゲート最下層があるのは海の中。海面下二百メートルである。
 高い水圧に耐えるために円錐形の外壁は、神話のバベルの塔にもにている。
 この階層の役割は、四基の人工島(ギガフロート)から伸びる連結用のワイヤーを調律することで、島全体の振動制御を行っている。

 ゲートの壁を経由して届いたワイヤーケーブルは、この最下層にまで巻きつけられている。
 圧倒的な鋼の質量と、爆発的な力を秘めた駆動機関の威圧感。
 その最下層の暑さ七十センチの気密隔壁を虹色に輝く人型の眷獣がこじ開ける。
 眷獣の胸の中心には、藍色の長髪、薄水色の瞳を持つ、人工生命体(ホムンクルス)の少女、アスタルテだ。
 彼女の背後から姿を現したのは、法衣をまとった屈強な体つきのロタリンギア殲教師ルードルフ・オイスタッハ。

命令完了(コンプリート)。目標を目視にて確認しました」

 自らの眷獣に包まれたアスタルテが告げる。
 宿主の寿命を喰らう眷獣の力を使いすぎた人工生命体(ホムンクルス)はもう限界だ。

 しかしオイスタッハは、そんなアスタルテには一瞥もくれずに、最下層の中央、四基の人工島(ギガフロート)から伸びる、四本のワイヤーケーブルの終端。全てを固定するアンカーの小さな逆ピラミッドの形の金属の土台に近づく。
 そのアンカーの中央。
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