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IS 龍咲桜子の虚実の日々
IS学園 入学初日 一
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ましたけど、そのせいでむしろうちの流派の動きに似てしまっています」
「なん、だと……」

 私の言葉に打ちひしがれる箒。同門のはずがいつの間にか同門ではなくなっていてショックなのでしょうか。
 でも仕方ありません。師範がいなかったのですから型の矯正をする人がいませんし、実践の中で腕を上げていくしかなかったのですから。そうやってでも腕を上げなければ、"俺"に抵抗もできずやられてしまいます。一夏はあれでかなりの負けず嫌いですから、勝つための方策として、教える者のいなくなった流派にこだわるよりも、目の前の相手の動きを盗む方が手っ取り早いかったのでしょう。

「篠ノ之流の型を思い出させてやるー、と言って一緒に練習すればいいのではありませんか? 一緒にいられる口実にもなりますよ」

 身体を傾けて箒の顔を覗き込むように見上げて、ニヤニヤとした笑いを向けてみます。

「べ、別に口実などいらん! だがアイツが教わりたいと言ってきたら教えてやらんでも……」

 後半の声がどんどん小さくなっていっているのは、意地と乙女心が葛藤しているのでしょうね。

「まあ、好きにするといいですよ。と、ここですね」

 話している間に昇降口にたどり着きました。臨時の掲示板に貼られているクラス分け表の前には人垣ができていて、後ろからではどうなっているのか伺えませんね。箒よりもわずかに低いこの身長が恨めしいです。

「あらら、どうしま――」
「さくちゃ〜ん、しのの〜ん」
「――しょう?」

 私たちを呼ぶ声に振り向くと、そこにはのほほんとした笑顔であまった袖をぶんぶんと振る女の子の姿がありました。その横には眼鏡をかけた青い髪の子。二人とも私の古くからの幼馴染です。箒は私を橋渡しとして二人と友人になりました。

「本音、簪、先に来ていたのか」

 箒が二人に向かっていったので、私も後についていきます。

「クラス分けはもう見た〜?」
「いや、ここからでは見えないのでな。本音はもう見たのか?」
「見たよ〜。かんちゃんだけ別のクラス〜」
「……うぅ」
「にこやかにいうことではない気がするが……。一、二組や三、四組など隣り合ったクラスは合同で授業するらしいが、クラス分けは?」
「私と、さくちゃんと、しののんが一くみで、かんちゃんが四くみ〜」
「…………うぅ」
「それは、まあ、強く生きろ、簪」
「頑張ってください、簪。私も時々遊びに行きますから」

 ぽん、と簪の肩に手を置く箒と私。
 人見知りというほどではありませんが、人付き合いがあまり上手いとは言えない簪です。旧知の仲がいない状況で大変だとは思いますが、ここでそろそろ一皮むけてほしいところです。どちらかと言えば"気難しい"というカテゴリに収まる箒とも打ち解けられたのですから
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