七幕 羽根がなくてもいいですか?
7幕
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フェイたちはマクスバード/リーゼ港から一気にラコルム海停へ渡り、一気にククル凍窟へ向かうルートを取った。
再びジュードとユリウスの間に挟まれて気まずい空気を味わうことになる――かと思いきや。
(ジュードも何だかんだでメガネのおじさんのこと庇うようになってきてる?)
シャウルーザ越溝橋を歩く時、海路で一度エージェントに見つかりかけた時、どちらもジュードが上手くごまかした。
ジュードは根が「いい人」なのでユリウスのような人物に対しても、一度距離が縮んでしまうと庇う方向に出てしまうらしい。
「ルドガーに君みたいな友人が出来たのは、歓迎すべきかどうなのか――」
庇われる当のユリウスがそう言うのだから、フェイでさえジュードのお人好しは相当なのだろうと察せられた。
そして、ようやっと着いたククル凍窟を、フェイはジュードとユリウスの介助を借りつつ進んだ。
ジュードは、インナーがシャツで自分も寒いだろうに、震えるフェイに白衣を貸してくれた。
セルシウスがいたのは凍窟を半分ほど進んだ、開けた場所だった。
氷岩に反照する微かな光と、霜が降りた花、その中心に立つセルシウス。
『誰かと思えば、お前たちか。何しに来た』
「――君を傷つけてしまった装置は、僕が造ったんだ」
ジュードは躊躇わず核心に切り込んだ。
「でも、僕は精霊を道具にしたかったわけじゃない。人間も精霊も、お互いに協力して暮らせる世の中にしたいんだ」
『あんなものを造っておいて? 笑わせるな!』
セルシウスから冷気が立ち昇った。フェイはすぐさまジュードを庇って前に出た。
「フェイ! 精霊術は」
「分かってる…!」
本当は分かりたくないが。フェイは火系の術式陣を平面展開して、寒気の余波がジュードとユリウスに及ばないよう防ぐに留めた。
(! この精霊……)
寒波の途切れに合わせて、ジュードがグローブを装着した腕でセルシウスに殴りかかった。セルシウスはそれを氷の盾で受けた。
氷の爪を纏ったセルシウスと、ジュードの拳がぶつかり合う。
殴り合い、蹴り合う二人の戦いに、どう介入していいか。フェイは指を宙で彷徨わせる。すると、その手を横から掴まれた。
「っ、おじさん」
「下手に手を出すな。彼を巻き込む」
「で、も」
セルシウスから氷塊をぶつけられ、ジュードが腕を交差させながら下がった。ジュードが片膝を突いた。追い打たれる。
今度こそフェイは前に出ようとして、気づく。セルシウスが胸を押さえ、苦しげな呼吸をくり返している。
今ならば――フェイは膝を突くジュードの前に立った。
「やめて。あなたのマナ、もう、ないんでしょう?」
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