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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十四話 フェザーン謀略戦(その6)
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人のルビンスキーも失われます。それで宜しいのですか」
ますます四人の顔が渋いものとなりました。そして大魔王様の笑みはますます大きくなります。

「皆さんが責任を負うのは帝国人二百四十億人、同盟市民百三十億人に対してのはずです。フェザーン人二十億人のために同盟、帝国合わせて三百五十億以上の人間の運命を変えるかもしれない秘密を放置しますか? この通信を聞いているのは、見ているのは私達だけではないという事を忘れないでください」
『……』

そうです、私達を見殺しにするのは極論すれば三百五十億以上の人間を見殺しにすることになるのです。大魔王様が広域通信を選んだわけが分かりました。なんという深謀遠慮! 愚かな人間共よ、大魔王様の前にひれ伏すが良い!

ブラウンシュバイク公が溜息を吐きました。疲れた様な表情をしています。当然です、人間風情が大魔王様に敵うわけがないのです。
『……良いだろう、認めよう』
『公!』
リッテンハイム侯がブラウンシュバイク公を止めようとしましたが公はそれを抑えました。

『リッテンハイム侯、続きを聞こう』
『……』
『トリューニヒト国防委員長、帝国は卿らがフェザーンを攻撃する事を認める』
ブラウンシュバイク公の言葉に今度はトリューニヒト国防委員長が溜息を吐きました。

『止むを得ませんな……。ベリョースカ号の安全が脅かされた場合は同盟軍はフェザーンに対して報復を行う。帝国はそれに対し異議を唱えない、宜しいですな』
『同意する。後はフェザーンが愚かな事をしないことを神に祈るだけだ』
『同感ですな』

やはり人類は愚かです。どうして神などという目に見えない物に祈るのか、目の前の大魔王様にこそ祈りを捧げなさい。そうすれば必ず御加護が有ります。スクリーンの四人がそれぞれの表情で神に祈る中、大魔王様の声が流れました。優しく何処か笑みを含んだような声です。
「それでは続きをお楽しみください」



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