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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十四話 フェザーン謀略戦(その6)
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も聞かれてしまうぞ」
「それが提督の狙いですかな。地球の、フェザーンの正体を皆が知る事になる。信者も離れるでしょう」
「ふむ」
俺の言葉にレムシャイド伯が頷いた。ヴァレンシュタイン提督が笑みを浮かべている。合格かな。
「それも有りますが、周囲の誤解を受けるような事は避けた方がよろしいでしょう」
誤解? 説明が足りないと思ったのか、提督が言葉を続けた。
「帝国、同盟、両国はこれまで国交が有りません。今、両国首脳が密かに接触すればどうなるか? 地球の事を言っても皆半信半疑でしょうね。痛くもない腹を探られ政敵に攻撃されることになる。そうでは有りませんか」
「なるほど、何処の世界でも猜疑心の強い人間は居るか……」
レムシャイド伯が頷いている。やれやれだな、まだ彼の思考には追いつけない……。もっともそう簡単に追いつけても詰まらんのも確か……。
地球の存在を暴き、ルビンスキーを追い詰めて行く彼の思考は将に圧巻だった。何故知っているのかは問うまい。問うても無駄、いやむしろ軽蔑されるだけだろう……。そしてあの思考の鋭さ、深さ、誰も追いつけないだろうと思った。感嘆しそれ以上に不安になった。
今のままでは誰もが彼の命を受けるだけになるだろう。彼は孤独だ、非凡である事が彼の孤独を深めている……。対等の立場で話を出来る人間が必要だ。ワイドボーン、ヤン、あの二人が傍に居ない以上、その代りを務める人間が要る。俺にその役が務まるかどうか……。
ベリョースカ号が発進した。ふわりと船体が浮き少しずつ上昇していく……。
宇宙暦 795年 9月16日 ベリョースカ号 ミハマ・サアヤ
通信の準備が出来ました。レムシャイド伯はガルミッシュ要塞に、そして私達は訓練を中止しこちらに向かっている第一艦隊に中継を頼んでいます。急ぐ必要が有ります。フェザーンの警備部隊が私達を追っているようです。フェザーンの軍事力は無いに等しいものですがそれでもベリョースカ号にとっては危険です。
レムシャイド伯の方は問題ありませんでした。ガルミッシュ要塞はオーディンへの中継を快く引き受けてくれました。レムシャイド伯の名前が物を言ったようです。帝国ってやはり貴族の力が大きいんだと素直に感心しました。
同盟側ですがワイドボーン提督もヤン提督も中継を快く引き受けてくれました。フェザーン回廊へ向かう事についても特に反対しません。二人ともある程度こういう事も有りうると想定していたのか、或いは事前にヴァレンシュタイン提督と打ち合わせが出来ていたのかもしれません。
「オーディンが通じました」
私が答えるとレムシャイド伯が“映してくれ”と言いました。伯の前に置いてあるコンソールに壮年の二人の男性が映ります。一人はブラウンシュバイク公、もう一人は
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