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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十四話 フェザーン謀略戦(その6)
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宇宙暦 795年 9月16日    フェザーン  ベリョースカ号     ワルター・フォン・シェーンコップ



「コーネフ船長、発進してください」
追跡者達を振り切って艦橋に飛び込むなりヴァレンシュタイン提督がコーネフ船長に話しかけた。しかしコーネフ船長は噛みつく様な勢いでヴァレンシュタイン提督に問い返してきた。

「発進? 発進だと、一体全体何がどうなってるんだ! ルビンスキーを攫った? 何を考えている!」
「後で話します、先ずは発進してください。契約は守ってもらいますよ」
コーネフ船長は顔を真っ赤に染めて怒っていたがヴァレンシュタイン提督は気にすることもなく悪戯っぽい表情で船長に話しかけた。

船長が怒るのも無理はないだろう、俺達が宇宙港に着いた時ベリョースカ号は警察に包囲され身動きが出来ないようになっていた。ルビンスキーとレムシャイド伯の頭にブラスターを突きつける事で包囲を解かせたが、それまでは気が気ではなかったはずだ。

「ふざけるな! コーネフ家は……」
「この二百年間犯罪者と役人を身内から出していない、でしょう。貴方の口癖は知っています」
「……」
絶句したコーネフ船長を見てヴァレンシュタイン提督が可笑しそうに笑った。

「ヴァレンシュタイン家も代々弁護士の家系でした。ですが私は亡命者で反逆者で大量殺人者、それだけでは足りずに今回フェザーンで初めて人攫いもしました。誰でも、どんな家でも最初というのは有りますよ。驚く様な事じゃありません。それにやってみれば結構楽しい」
彼方此方で失笑が起きた。ますます船長の顔が赤くなる。

「船長、卿が怒るのは分かる。だが容易ならぬ事が起きているのだ。私がこの男と共に居る事で分かるだろう。直ぐに発進してくれ」
レムシャイド伯が笑いを堪えながら船長に船を出すように頼んだ。この老人も結構変わっている。宇宙港ではブラスターを頭に突きつけられる哀れな人質の役を喜んでやっていた。

「後で説明してもらいますよ!」
忌々しそうな口調でそう言うとコーネフ船長は発進準備にかかった。それを見てレムシャイド伯とヴァレンシュタイン提督が顔を見合わせて苦笑する。
「困った男だな」
「それは私ですか、それともコーネフ船長?」
「……」
「……」
さてどちらだろう……。

「……レムシャイド伯、フェザーン回廊の入り口に巡航艦を待機させています。発進次第、連絡を取って迎えに来させましょう。二日も有れば合流できると思います。それと訓練中の艦隊もこちらに呼びます」
「うむ、我らに妙な事をすると後が怖いという事か……。しかし艦隊の派遣は帝国が納得するまい」
レムシャイド伯が首を傾げた。

「先程の執務室での遣り取りですが一部始終を録画してあります。あれを帝国、同盟の上層
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