2:帰り道
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
一人、酒場からの夜の帰り道。街道は他の店からも吐き出された客でごった返し、一日の終わりも関係無いとばかりに話の華が至る所に咲き乱れていたが、今はとても耳を貸す気にはなれない。
あの話の末に、俺はクラインの依頼を受諾した。
エギルは「本当に大丈夫なのか?」と、店を出るまで何度も心配して言ってきたが、俺の答えは変わらなかった。
もともと、クラインが頼み込んできたその時から、首を縦に振るつもりだったのだ。……このデスゲームが始まった最初の日、クラインを置いていった……その時から今も続く後悔の償いが僅かでも出来るのなら、という一心で。
だが、今はそんな償いの気持ちはさらさら無かった。理由は他でもない。今日、酒場で大声で俺の名前を呼ぶ前からずっと……表面こそいつも通りのアホ面でも、内心では友達を傷つけられた怒りや、俺に危険を承知で仕事を依頼した申し訳無さ、そして何より己の非力さを嘆いていたのであろう……不器用で、馬鹿で、どうしようもなく良い奴な、俺の大切な『親友』の為だ。
思わず、手にした羊皮紙のロールに力が込もる。
「……ダメだな。俺も大概、ってことなのかな……」
溜息と同時に独り言も漏らし、熱くなりかけた頭を冷やすがてら、歩を緩めて頭の中を整理する。
――依頼の内容は、幻の仔馬《ミストユニコーン》の討伐と、その素材の調達。それを狙う《死神》と《笑う棺桶》との関係の調査。
報酬は、前金として既にクラインからそこそこの額のコルを受け取った。が、本当の報酬は彼曰く、別にあるのだそうだ。そもそも、ユニコーンを狙う者の殆どが、ドロップする希少な素材よりも《それ》を目的として血眼に探しているのだという。
酒場で、ついさっきまで沈んだ表情をしてハムベーコンを肴に飲んでいたクラインが、突然アッと叫び声を上げるやいなや「一番大事な報酬のことを話していなかった!」と慌てていた顔を思い出す。そのテンションの切り替えの早さには心底感服したが、また心底「アホだ……」とも思わざるを得なかった。心配していた俺達二人の気持ちにもなって欲しいところだが……再びシリアスに洒落込むほど俺達は無粋ではなく、俺とエギルは苦笑しつつ、矢継ぎ早に説明し始めたクラインの話に耳を傾けていたのだ。
思い返しながらまた一つ苦笑を漏らし、頭の整理を続ける。
ユニコーンを狙うプレイヤー達の本当の目的は何なのか。
俺の今回の仕事に見合う本当の報酬とは何なのか。
《死神》と呼ばれる謎のプレイヤーまでもが、他のプレイヤーを害してまでユニコーンに固執する物とは。
そして、その討伐の難しさ以上に、その後得られる希少な素材以上に、知る者誰もが魅了されるメリットとは。
……答えは至ってシンプルだ。
――討伐した際の、獲得
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ