帰り道
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学校が終わり、帰ろうかとしていると梢が教室にやってきた。
「にぃ、一緒に帰ろ」
よくよく考えれば俺たち三年の教室は一年の教室よりも一つ階が上だ。わざわざ来てくれたのかと思うと少しうれしかった。
「オーケー、一緒に帰ろう」
「うんっ」
梢は嬉しそうに顔を歪ませた。
こういうときの梢は本当に可愛い。綺麗な顔つきをしながらもやっぱり子供なんだなと実感できるときが一番可愛いと思う。
って、実の妹相手に何考えてるんだ俺は……。
梢と一緒に校門をでると用務員のおじさんに
「とても仲がいいんだねえ君たち」
と言われた。茶化されているのか感心しているのかよくわからなかったがとにかく曖昧に笑っておいた。梢は顔を赤くしている。そんなに恥ずかしがることでもないだろうと思うんだが……。
しばし無言で歩いた後、梢が声を掛けてきた。
「にぃ、聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
梢はどういう風に質問しようか少し考えたようなそぶりを見せた後、
「えーと、昨日……今日か、いつまで走ってたの?」
うっ……そのことか。
どうしようか。
というかどこまで言えばいいのか分からないのだ。多分梢は俺がほんとに早朝まで家にいなかったことを知りながら聞いてきたんだろう。つまり梢は俺に時間を言わせて、そのあと外で何をしていたのか聞くつもりなんだ。
だがしかし、俺は学校での出来事を梢に言うことはできない。もちろん夏目に口止めをされているわけではないが、言ってしまったら梢は心配するだろうし、おおごとになってしまう可能性もある。それだけは何としても避けたい。
「うーん、いつ帰ってきたか忘れちゃったよ」
上手い! ナイスごまかし!
しかしこれで梢は引いてくれはしなかった。
「ふーん、覚えてないんだ。じゃあ聞くね、にぃ。外ではほんとに走ってただけ?」
「うっ……」
ああ、やっぱりこの質問になったか……。
はっきりいって「走っただけだよ」と答えることができたらそれが一番いいのだが――
(妹に嘘をつきたくはないんだよな―)
やっぱり兄が簡単に嘘をつくことはよくないと思うのだ。
もちろん嘘も方便、という場合はある。けれど――
「うーんとな……、俺、実は走ってたら学校の方から音が聞こえてさ。行ってみたんだ。そしたらそこに夏目がいて、ちょっと一緒にいたんだよ」
嘘はついていない。というかほとんど全部言ってしまった。ただ魔法だなんだのところは言わなかった。これを言わなければ夜の学校で夏目と一緒にいたことが不思議かもしれないがおおごとになることはないだろう。
――――が
「にぃ……学校に行ったの?」
「え……あ、ああ」
「で、そこに
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